加賀市教育長・島谷千春、脱一斉型で「子ども主体の授業」じわじわ増やす仕掛け 「Be the Player」掲げる教育ビジョンの本意

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23年度はこの流れを加速するために、これまで1名だった先生に伴走する教育推進プロジェクトマネージャーを3名に増員。トップダウンで押し付けすぎず、手上げ制でやりたい学校を募り、伴走しながらキーパーソンとなるような先生を育てて授業のノウハウを全市で共有し、子ども主体の授業をじわじわ増やしていっています。1つの突出したモデル校をつくったり、“遠くの先進校”に視察に行ったりするよりも、近くの学校同士でネットワークを組み皆で学び合うスタイルのほうが、改革の持続可能性や地域の教育力の総合的な高まりにつながると感じています」(島谷氏)

学力だけでなく、この学びの改革が狙う自己肯定感や学びに向かう力など非認知能力の育成の効果についても福井大学やNPO、AIベンチャー企業などと連携して可視化し、保護者や市民に説明していくという。

不登校支援の拠点としてサードプレイスを設置

教室に足が向かない子に向けては、教室以外で過ごし学べる学校内スペシャルサポートルームの市内全校の設置に向けて、試行を開始。さらに、教育総合支援センターを旧三木小学校に移転・リニューアルし、学校とも家庭とも異なるサードプレイスに。不登校支援の拠点として機能強化を図る。

「廃校を活用していることから『学校らしさ』が残っていたため、あえて『学校っぽくない』空間デザインに改修しました。移転の際は、地域の方がペンキ塗りや花壇設置、畑作りなどを手伝ってくださいました。廃校により一度は子どもの声が消えた地域にまた活気が戻るということで非常に喜んでくださり、『みんなで材料を畑で育ててカレーを作るイベントをしよう』などのアイデアも出ています。子どもを地域の力で育てようとする心強さを感じます。2022年11月には教育NPOのカタリバさんと連携協定を結びました。不登校児童生徒についての要因分析や調査を行い、その子の状況に応じて福祉とつなげるなどきめ細かな配慮ができるような機能を持たせていきたいと考えています」(島谷氏)

教育総合支援センターを旧三木小学校に移転・リニューアル。学校とも家庭とも異なるサードプレイスとして不登校支援の拠点に

小中一貫STEAMプログラムを検討

学校教育ビジョンを進めていくうえで、決定的に不足していたのが、ビジョンの広報、「未来は自分で創る」プロジェクトで掲げるSTEAM教育、プログラミング教育のカリキュラム設計、企業や大学、地域など市内小中学校とのSTEAM教育に関する連携先の確保、学校での授業展開に必要な条件整備の検討・交渉などを担う人材だった。

これらの業務を担当するのが、2023年4月から事務局政策官に就任した寺西隆行氏だ。寺西氏は、これまでに経済産業省「未来の教室」教育・広報アドバイザー、文部科学省広報戦略アドバイザーなどを歴任してきた。

寺西隆行(てらにし・たかゆき)
加賀市教育委員会事務局政策官
株式会社Z会、三島市教育委員会GIGAスクールアドバイザー、経済産業省「未来の教室」教育・広報アドバイザー、文部科学省広報戦略アドバイザー、一般社団法人ICT CONNECT21事務局次長、ライフイズテック株式会社官民共創プロモーターを経て23年4月より現職
(写真:加賀市教育委員会提供)

「前職ではプログラミング教育を行ったり、一般社団法人ICT CONNECT 21でプログラミング教育やSTEAM教育を広めたりしてきました。その中で、主要5教科については、これまで蓄積されてきた一般的なカリキュラムが先生方の共通理解として浸透していると再認識しています。しかし、プログラミング教育やSTEAM教育については、それぞれの先生が、『もともとないものをそれぞれ独自に解釈し、バラバラの状態のまま実践している』ということに問題意識を感じていました。

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