困難を見落とされがちな「境界知能」の子、「就職が難しい」「だまされる」事例も 育まれにくい「自己肯定感」、早期から支援を

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本来なら、学校は一律一斉の授業ではなく、一人ひとりがそれぞれ有意義な時間を過ごせるインクルーシブな環境づくりを整えるべきではないかと思います。文科省は「個別最適な学び」、厚生労働省も「切れ目のない支援」と言っていますが、それが現場や社会に届いていないと感じます。

(撮影:尾形文繁)

──境界知能の方が何らかの支援につながる方法はないのでしょうか。

私の患者さんは発達障害のある方や不登校のケースが多いのですが、あるときこれまで診てきた患者さんのIQを振り返ってみたところ、境界知能に該当する方が多くいることに気づきました。

きちんと分析したわけではないのですが、発達障害のある患者さんたちのIQは、ボリュームゾーンのピークがIQ90くらいだと推測しています。発達障害のある方のIQが正規分布すると考えるならば、理論上はIQのボリュームゾーンは、境界知能の範囲とされるIQ70〜84の側に寄っていることになります。そのため、発達障害と境界知能を併存する人は多いのではないかとみています。

これも臨床経験に基づく仮説ですが、境界知能の方は、反応性愛着障害や不登校などとの併存が考えられる人も多いように思います。よって、困難がある場合は、まずは診断を受け、その診断名での公的な支援を受けることを入り口に適切な支援につながっていくという方法は考えられます。

しかし、境界知能の方は、学校や社会で「自分は努力不足なのだ」というメッセージばかり受け取ってきたため、自分から「助けてください」と言うのは非常にエネルギーを要します。また、「相談してもうまくいかなかった」「助けてほしい時に助けてもらえなかった」というネガティブな経験を持つ方も多く、支援を断ってしまう傾向にあります。あるいは親御さんが「障害があるとなると、もっとつらい目に遭うかもしれない」と考えて、支援を断ってしまうケースもあります。ここも難しいところです。

──教員が意識すべき点があれば教えてください。

境界知能の子は小学校から高校までわからない授業を聞き続けることになり、有意義な楽しい時間を過ごせていないという現実があります。学校で幸せな時間を過ごせないことはつらいことですし、問題ですよね。まずは学校の先生をはじめ、多くの方に境界知能について知ってもらえたらと思います。学校の先生は、これまでたくさん努力して成功体験を積んでいらした方が多いのではないでしょうか。だからこそ成功体験を積めない、積みにくい子どもがいることを知っていただけたらと思います。

(文:吉田渓、注記のない写真:yosan/PIXTA)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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