格安切符で旅客急増、ドイツ鉄道で多発する遅延 インフラ投資必須だが「鉄道優先政策」揺らぐ
コロナ禍により、2020年から2021年にかけて年間数十億ユーロという損失を被ったドイツ鉄道(DB)グループ。2022年はコロナの影響に加え、ロシアによるウクライナ侵攻やインフレ率の上昇など厳しい経営環境だったにもかかわらず、黒字転換を達成した。営業利益は赤字だった2021年と比較して約28億ユーロ(約4135億円)改善し、約13億ユーロ(約1920億円)に。さらに、グループ全体の営業収益は約563億ユーロ(約8兆3205億円)と過去最高を記録した。
黒字転換した理由についてDBは、物流子会社のDBシェンカーの業績向上と旅客輸送の旺盛な需要を挙げている。
「9ユーロチケット」で旅客急増
旅客輸送の復調は目覚ましい。DBによると、コロナ禍による混乱が落ち着き始めて間もなく乗客数は回復し、2022年には約20億人がDBの列車を利用した。これは2021年に比べて40%も増加した計算になる。とくに長距離輸送部門は2021年比で利用者数が約61%増え、営業収益は約48億ユーロ(約7090億円)に達した。地域輸送部門も約10億ユーロ(約1478億円)の増収となっている。旅客キロ(すべての乗客が列車に乗って移動した距離の合計)は前年比で約63%増の826億キロに達した。
鉄道利用者が増えた背景には、2022年の6月から8月にかけて期間限定で発売された9ユーロ(約1330円)チケットの販売が後押ししたことがある。このチケットはもともと、ロシアによるウクライナ侵攻が徐々に市民生活へ影響を及ぼす中、自動車利用によるエネルギー消費を抑制するために公共交通機関の利用を促すべく、全国どこでも使える特別割引の定額制乗車券を導入するという主旨で発売された。試験的な導入で、発売期間は3カ月間のみだったが、約5200万枚が販売された。
コロナ禍以前から注目されている環境問題への関心の高まりも、鉄道利用者の増加を後押ししていると考えられている。
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