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日本外交は「価値観」インフレに陥っていないか 佐藤優の情報術、91年ソ連クーデター事件簿⑨

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ロシア大統領選挙でジュガーノフ共産党議長が敗れた後、同氏が主宰する党幹部の内輪の宴席に筆者は初めて招かれた。ジュガーノフ氏が筆者を身内と認めたということだ。また東郷和彦公使(大使館ナンバー2)、森敏光公使(政務班長)ら大使館幹部も共産党幹部と親しく付き合い、定期的に意見交換をするようになった。

共産党の幹部や国会議員は、資本主義国政府の招待で外遊することに対して消極的だ。借りをつくりたくないからだ。日本大使館はそのあたりの心理をよく理解し、大使館員が共産党国家院(下院)議員の招待に応じて選挙区を訪問し、その代わりに日本に招待するという方法をとった。これならば「交換」なので五分と五分になる。

戦略的提携と日本への恩義

1998年4月に静岡県伊東市川奈で行われた日ロ首脳会談で、橋本龍太郎首相はエリツィン大統領に北方領土解決策についての秘密提案(「川奈提案」)を行った。その時点で、エリツィン氏は領土問題の解決に前向きだった。この種の問題にロシア共産党は脊髄反射のように拒否反応を示すはずだったが沈黙した。日本の外交官や鈴木宗男衆議院議員らとロシア共産党幹部や国家院議員が親しくなっていることが明らかに影響していた。

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