外国にルーツを持つ子どもが過半数の時代も…横浜の市立小学校での実践 少人数指導や取り出し授業は日本人にも利点が

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「授業の目標はもちろん、子どもが内容を100%理解することです。でもいきなりそれは難しいと感じるなら、まずは80を目指すグループで学ぶ。それでも厳しそうなら、60を目指してやってみる。そうした姿勢で選べるよう、国語と算数は3から4つのグループに分けました。グループは日本人も外国にルーツを持つ子どもも関係なく、事前のプレテストの結果でクラスを決めたり、子ども自身がクラスを選択したりしていました」

体制的に複数グループがつくれない場合でも、1つのクラスに3~4人の教員が入って、一人ひとりを丁寧に見るようにした。また、教室や担当教員をつねにシャッフルするようにもした。これは「できないグループ」の固定化を避け、子どもたちに劣等感を抱かせないための工夫だった。

少人数指導のメリットは日本人の子どもにとっても大きいものだ。また教員にとっては実質的にチーム担任制が導入されたことになり、学級の問題を一人で抱え込むストレスが軽減されただろう。現在も、同校ではこの少人数指導が続けられている。

教員だけでなく、学校がある地域のすべての人と協働

菊池氏は、国籍もルーツもさまざまな子どもたちが一緒に過ごすことで起こる化学反応を何度も目にしてきた。

「子どもは教員よりもよくほかの子どもを見ていることもあり、彼らが苦手なことだけでなく、できることもよく知っています。日本語力に課題がある子どもが授業中に困ったときには、率先して手助けしてくれる例がよくありました。彼らに教えやすいように座席もいつの間にか移動していたり、『先生、この子これならできるからやらせてあげて!』と教えてくれたりするのです」

こうした助け合いは、教室に多様な相乗効果を生む。外国にルーツを持つ子どもはピンチを救ってもらえてうれしいし、相手の状況や気持ちに応じた行動を取ることは、日本人の子どもにとっても大きな学びとなる。

上飯田小学校の国際教室。入り口には利用のルールが平易な日本語で示されている。学習スペースと区切られたエリアには、さまざまな国の民族衣装やおもちゃ、本などが

国籍を問わず、学校全体を巻き込んだ取り組みは授業だけにとどまらない。柔軟な働き方ができる外国人は多くないため、日中には子どもの学校のPTA活動に参加できないケースが多かった。そこで前身のいちょう小学校では、PTAの会合を19時以降に開催することにした。すると外国籍の保護者の多くが関心を持って参加するようになったという。とくに負担のかかるPTA会長を複数人体制にして、外国籍の保護者が担当した年もあったそうだ。共働き世帯が増え続ける昨今、PTAのあり方は全国でさまざまな議論を生んでいるが、こうしたフレキシブルな変化は、日本人の家庭にとってもありがたいことだろう。

この地域では、日本人もベトナム人や中国人も保育園時代から共に育つため、偏見や差別が少なく、学校でのいじめも起こりにくい。さらに加配の専門教員が複数いる状況は「恵まれている」と言われることが多かった。しかし加配教員が比較的多い飯田北いちょう小でも、外国にルーツを持つ子どもやその保護者も巻き込んで「隣の生活者」として扱わなければ、学校運営そのものが成り立たないのだ。

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