外国にルーツを持つ子どもが過半数の時代も…横浜の市立小学校での実践 少人数指導や取り出し授業は日本人にも利点が

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古くから「国際都市」として成長してきた横浜市だが、1980年代以降には公立の学校の多様化が進んだ。国際情勢や法改正の影響で、中国やベトナムなどから多くの人々が同市に移り住み、「外国にルーツを持つ子ども(※)」が地域の学校で学ぶようになったためだ。小・中学校合わせて外国にルーツを持つ子どもの在籍数は1万1303人、そのうち日本語指導が必要な子どもは3297人に上る(2022年5月時点、横浜市教育委員会による)。長く彼らの指導に当たる横浜市立上飯田小学校の菊池聡氏に、その状況を詳しく聞く。
※本記事中では、外国籍および外国につながる子どもの総称として用いる

全校児童の8割が外国籍の時代を経て、少人数指導を確立

現在は横浜市立上飯田小学校に勤める菊池聡氏。宮城県出身で、過去の自身を「元は体育担当で、バリバリの学級担任志向でした」と振り返る。最初に赴任した小学校には海外経験の豊富な教職員が多くおり、その影響を受ける形で香港の日本人学校へ。2004年に帰国して「国際教室を担当してほしい」と言われたときは、外国にルーツを持つ子どもを取り巻く状況についての知識もなかったという。

「対象の子どもがどれぐらいいるのかも知らなかったし、当時はその重要性や責任もわかりませんでした。『何をするんだろう?』と思いながら引き受けたのを覚えています」

だが以来20年、複数の小学校を経験しながら、国際教室担当一筋に情熱を注ぎ続けている。

菊池 聡(きくち・さとし)
横浜市立小学校主幹教諭/横浜市立上飯田小学校国際教室担当
学校の枠を超え、近隣の幼稚園や保育園、中学校や高等学校とも連携を図りながら多文化共生に取り組む。大学やボランティア団体など、協働の幅は広い。著書に『学級担任のための外国人児童指導ハンドブック』(小学館)、『〈超・多国籍学校〉は今日もにぎやか!』(岩波書店)などがある

菊池氏が帰国当初から10年間勤めた同市立飯田北いちょう小学校(14年にいちょう小学校と飯田北小学校を統合して開校)は、全児童の8割近くが外国にルーツを持つ子どもで占められていたこともあったほどの超国際的な学校だった。

「インドシナ難民の定住促進センターが近くにあったことや、近隣の自動車工場が外国人労働者を受け入れたことなどから、1980年代後半から90年代初頭にかけて、外国籍の子どもが一度に10人単位で増え続けた時期があったそうです。先輩教員の苦労も大きかったと思いますが、私が前身のいちょう小に来た際には、外国にルーツを持つ子どもの指導のための加配がすでに行われていました」

2014年、同校と隣接する小学校との統合に合わせて、菊池氏は、毎日の国語科と算数科の学習で徹底した完全少人数指導体制を整えた。同年の法整備によって「日本語指導が必要な児童生徒を対象とした『特別の教育課程』の編成・実施」が正式に認められ、日本語力や学力に応じた取り出し授業や少人数指導も行えるようになった。

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