長野県と全77市町村による「協働電子図書館」、注力する「学校との連携」の中身 英語や探究、郷土学習など電子書籍活用を提案

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一方で、利便性などの課題も見えてきており、「申請窓口が増やせるようサポートしたり、電子申請の方法をよりわかりやすくしたり、検索機能を高めたりして、さらに利用者を拡大していきたいと考えています」と、森氏は話す。

利用拡大に当たり、主に3つの重点取り組みを掲げている。1つ目は、「読書バリアフリー」。視覚障害者向け電子図書館サービス「アクセシブルライブラリー」の導入や、福祉関係団体と連携した読書バリアフリー実現に向けた総合的な展開を検討している。

2つ目は「地域資料の充実」で、学校の副読本や自治体が著作権を持つ書籍の電子書籍化、地方出版物のデジタル化も働きかけていく。

そして3つ目が、「学校教育との連携」だ。現在、希望する自治体や学校と共に、授業での活用や学校図書館との連携などを始めている。

「電子書籍」は学校現場でどのように活用できるのか?

学校連携チームリーダーを務める千曲市立戸倉図書館 主査の宮崎摩紀氏には、1年以上もの間、休館を余儀なくされた経験がある。

千曲市立戸倉図書館 主査の宮崎摩紀氏(学校連携チームリーダー)

「千曲市の更埴図書館は『令和元年東日本台風』のときに水害に遭い、市民に対するあらゆるサービスをはじめ、図書館システムを連携している市内13の小中学校との連携も止まってしまいました。そのとき、電子書籍があればサービスを止めなくて済んだのではないか、学校にも既存のサービスとは異なるアプローチが必要ではないかと考えたことから、この取り組みに参画し始めました」

同じく学校連携チームの1人で、前職が小中学校の教諭だったという佐久市立中央図書館 館長の依田緑氏はこう話す。

佐久市立中央図書館 館長の依田緑氏(利用登録部会長/学校連携チーム)
※肩書は取材当時(20年3月に退任)

「学校にいる頃から、学校司書教諭として、校長として、学校図書館の授業活用について課題感をずっと持っていました。また、子どもたちに1人1台端末が配られ、端末を家に持ち帰るようにもなってきましたが、ICT機器を通じて得られる情報の中身にも課題を感じていました。やはり子どもたちにはよいコンテンツと出合わせたいですし、電子書籍を含めたさまざまな情報を扱う力の育成についても、学校と連携していけたらと願い、取り組んできました」

では、電子書籍の活用により、学校教育はどう変わるのか。学校司書の経験があり、運営委員会で選書を担当する松川村図書館 館長の棟田聖子氏は、こう述べる。

松川村図書館 館長の棟田聖子氏(選書部会長)

「例えば地域資料は学校の郷土学習で必ず使われるものですが、たいてい蔵書が1冊しかなく、現状は子どもたち全員が一斉に使えるようにはなっていません。この電子化が進めば、先生方も授業がやりやすくなると思います」

しかし、いきなり「授業で使って」と言われても、戸惑う教員も少なくない。そのため、運営委員会は今後、授業での活用法を学校現場に提案していくという。その内容について、宮崎氏はこう説明する。

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