中大附属「図書館で授業」の浸透ぶりがスゴすぎた 司書教諭が推奨「無料で今すぐできるICT活用」

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小
中央大学附属中学校・高等学校(東京都小金井市)の図書館では、日常的にさまざまな教科の授業が行われている。その授業利用実績は何と年間約800時間。利用が活発化したカギは20年前から取り組んできたICT環境の整備にあるという。同校はいかにしてICTを活用して「教育課程の展開に寄与する学校図書館」の実現に取り組んできたのか。また、「主体的・対話的で深い学び」に寄与する拠点を目指す学校図書館に、今できることは何か。同校の司書教諭、平野誠氏に話を聞いた。

「図書館で授業」を日常化させたICT導入

授業でにぎわう光景が当たり前になっているという、中央大学附属中学校・高等学校の図書館。本館は3クラス分、分館は1クラス分の同時授業が可能であり、同じ時間に複数クラスの授業が実施されることも珍しくない。

3層構造の図書館本館は、閲覧席計300席や書庫のほか、視聴覚ホールなどを備えている(左)。2010年に開館した分館の授業風景。洋書を含む語学関係資料と学習漫画が充実(右)
(分館写真:中央大学附属中学校・高等学校図書館提供)

多いときで授業利用は年間1000時間以上、コロナ禍による臨時休校があった2020年も500時間を超えたという。また、6学年のほとんどの教科が図書館で授業を行っている。

高3の授業「表現研究」の様子。情報の収集・整理・分析・発表などを経て1万字以上の卒論を書く。こうした探究学習が図書館で日常的に行われている

現在、同校の図書館は約18万7000冊の図書と約5500本の視聴覚資料を有している。恵まれた施設環境があるにせよ、なぜこれほどまでに図書館の活用が盛んなのか。同校の司書教諭、平野誠氏はこう説明する。

司書教諭の平野誠氏

「本校は以前から、課題解決型学習や教科横断型の探究学習を重視する教育活動を行ってきました。そのため、図書館も1978年の開館以来、生徒の学習や教職員の教材研究に対応できる図書資料の収集に努めてきました。こうした背景の下、98年以降のICT環境の整備により、図書館利用が活性化していったのです」

まずは所蔵データの電子化を目的に業務用端末とインターネットを導入し、2002年に独自の所蔵資料検索システム(OPAC)を稼働させた。03年からは商用データベースや電子図書館などのデジタル資料も増やしていった。豊富なアナログの蔵書にデジタル資料が加わったことで、徐々に「図書館での授業」が増加。教員の授業ニーズに合わせながら学習者用端末も01年から少しずつ増設し、大型掲示装置なども導入していった。

現在、本館はパソコン85台、プリンター21台を配備(左)。壁面スクリーンも活用(右)

06年には学習者用端末を60台に増設するとともに無線LANも敷設。「ここで教員念願の1クラス分『1人1台端末』が整い、年間の授業利用は250時間から800時間へと急増しました」と、平野氏は振り返る。

ちなみにICTの活用は教室でも日常化しており、すでに高校では授業中に生徒たちが自身のスマホや端末を使って学んでいる状態だが、いわゆる「1人1台端末」についても導入予定で検討を進めているという。

ICT活用を加速させた「独自の仕掛け」とは?

ICTが最大限に活用されるよう、さまざまな工夫も行ってきた。例えば、キーワード検索。同校のOPACは、調べたい言葉を入力すると、書名だけでなく本の内容からも検索してくれる。この機能はスタッフが図書を1冊1冊読み込み、内容に関連したキーワードを追記するなど書誌データを整備することで実現しているが、「ここまでやる図書館はないのでは」と平野氏は話す。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事