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日米密約をスクープした西山太吉が遺したもの 政府介入で縮まる「言論の自由」を強く危惧

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宏池会政治を高く評価していた西山氏からくみ取るべきものとは。

元毎日新聞記者の西山太吉氏
「報道の自由」の将来を危惧していた西山太吉氏は、2013年、特定秘密保護法成立の際に記者会見をした(写真:Natsuki Sakai/アフロ)

2月24日、元毎日新聞記者の西山太吉氏が亡くなった。私は10年ほど前に、氏を市民向けの講演会に招いたことがある。権力のうそは絶対に許さないという裂帛(れっぱく)の気迫を思い出す。西山氏の機密文書スクープから50年経ち、密約問題も過去の出来事になった。

とはいえ、西山氏の戦いの意義を共有することは、民主主義が機能不全を起こしている今の日本にとって重要である。西山氏の事件を契機に、日本でも知る権利という言葉が人口に膾炙(かいしゃ)するようになった。政府の行為を正確に知ることなしに、政治参加はできない。国民に事実を伝えるのはマスメディアの仕事である。

折しも、第2次安倍晋三政権の下で、礒崎陽輔首相補佐官が放送法の解釈を変更するよう総務省の担当者に働きかけていたことを示す文書が国会で取り上げられた。

放送法でいう公平は、それ以前は放送局の報道全体でバランスを取ることを意味していたが、一つひとつの番組で政治的主張の間のバランスを取るように解釈変更が行われた。政権に対して批判的なコメントをするキャスターらの口を封じるために、公平という言葉の意味を変えて、政権に関する論評自体をしにくくするというのが、介入の狙いだったと思われる。

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