山形・天童中部小学校「3つの型破りな授業」で子どもが自らぐんと伸びる訳 大谷敦司・前校長「子どもは有能な学び手」

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保護者も同じだ。毎日の授業の様子をホームページにアップして情報共有はするものの、子どもたちが家に帰って「授業が面白かった」と言えば、子どもたちの姿を見て親は評価をする。何かを変えるときに丁寧な説明は必要だが、全面的に賛成を得ることは容易ではない。先生にも保護者にも、子どもたちの姿で成果を見せることが、いちばんの近道ということなのだろう。

「特別支援の子どもたちも『自学・自習』『マイプラン学習』『フリースタイルプロジェクト』に一緒に取り組んでいます。同じコンテンツでは難しいこともあり、障害に合わせて教材を工夫する必要はあります。しかし、学ぶ内容は違っても同じ学び方で学んでいくのは、同じ学校で生活しているのですから当たり前です。特別支援の子たちのほうが集中してやっているということも多く、一緒に学ぶことでみんなが成長できると考えています」

すべての子どもが国籍や人種、宗教、ジェンダー、障害のあるなしにかかわらず一緒に学べるインクルーシブ教育には、現在のクラス規模では難しく理想論という声が多いが、授業スタイルの工夫で同じ教室で学ぶことも可能ということだ。さらに、こうして新しく取り入れた3つの学習が、全体の8割の授業にも好影響を与えて相乗効果をもたらしているという。

「先生にも『教える』必要のない時間ができたことで、余裕を持って授業ができるようになりました。子どもたちも、これまではどこに連れていかれるのかわからない状態で授業についていっていましたが、だんだんと先生がこの授業ではどんな所を工夫して、どこをポイントにしているかがわかるようになった。あるレベルまでは先生が引っ張らなくても授業は進むと考えているのですが、深いレベルまでいくには、やはり先生の力が必要。子どもたちも、先生と一緒に学ぶとやっぱり面白いと言ってくれるようになりました」

今や全国から注目を集める天童中部小学校だが、こうしたユニークな授業スタイルを自校でも取り入れたいという学校も多いのではないか。そのために注意すべき点を尋ねると、この授業スタイルが広がっていくことを決して望んでいるわけではないと大谷氏は話す。

「天童中部小学校は、特別な学校ではありません。やろうと思えばどんな学校でもできます。子どもは有能な学び手です。信じて任せれば、自分たちで伸びていきます。ただ形だけをまねるのではなく、自校の子どもたちをよく見て、どういうことをやれば力が伸びるのか、考えることが大切だと思います。 われわれが考えたのは表面的な学力向上ではなく、子どもが幸せになるための本当の意味での学力向上に向けた支援です。彼らが将来社会をつくっていくためには、自分で学ぶ力を伸ばさなければならない。そのために学校が、覚悟を持つことが必要ではないでしょうか」

(文:柿崎明子、編集部 細川めぐみ、写真:大谷氏提供)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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