──新たな日本銀行の総裁として、経済学者の植田和男氏を起用する人事案が提出されました。この人事を率直にどうみていますか?
植田氏は日本を代表するマクロ経済学者であり、過去には有力な総裁候補として名前が挙がっていた。しかし正直なところ、今回は起用の可能性をまったく想定していなかった。
日銀の最高意思決定機関である政策委員会の議長として、植田氏が高い資質を持っていることは間違いない。同氏は優れた理論家だが、同時に日銀の審議員を1998~2005年までの7年間務めた実務家でもある。
日銀に在籍した期間では、一審議委員でありながら、政策委員会において議論の整理や異なる各委員の意見の妥協点の方向性を示すなど、意見の集約においても重要な役割を果たした。理論家にありがちな自らの意見を押し通すというスタイルではない。
直近の寄稿内容や審議員時代からの持論なども踏まえて考えると、植田氏が研究者として志向するのは、基本的には時間軸効果を踏まえた短期金利を中心としたオーソドックスな金融政策への回帰だ。
植田氏は「YCCは望ましくない」という立場
大規模資産購入(LSAP)については、状況次第では否定しないとみられるが、積極的には支持せず、長短金利操作(イールドカーブコントロール=YCC)については弊害が多く望ましくないとの立場であろう。
2月25日に国会で行われた所信聴取での発言も、植田次期体制の下でわれわれは、異次元緩和から持続可能な緩和への移行を目にすることになるということを印象づけるものだった。
──2022年12月に日銀は政策修正を行い、YCCの下における10年物国債金利の許容変動幅をプラスマイナス0.25%から同0.5%に引き上げました。次にいつ、どのような手を打つかが大きな注目点となっています。
私は植田新体制がスタートする前の3月9~10日の金融政策決定会合で、日銀は10年国債金利のレンジを一気に1%まで拡大するとみている。理由はこうだ。
この記事は会員限定です。登録すると続きをお読み頂けます。
登録は簡単3ステップ
東洋経済のオリジナル記事1,000本以上が読み放題
おすすめ情報をメルマガでお届け
無料会員登録はこちら
ログインはこちら