部活動の地域移行は「ゼロか100」の暴挙、人材失う危険や「文武両道」の破綻懸念 賛成派・反対派双方の声から考える真の争点

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部活動を志望する未来・現役の貴重な教員人材を失う

実際、教員不足やなり手不足の深刻化もあって、シフト制などを実現するには解決しなければならない問題が多くある。周囲の学校との「公平性」を重視する傾向も、新しい施策を取り入れる足かせとなる。そんな中、塩多氏は地域移行に関してこんな懸念も明かす。

「私は、部活動がやりたくて教員を志望する学生をたくさん知っています。志やエネルギーのある学生は、部活動の地域移行が決まれば教員を諦めてしまうかもしれません。さらには今、部活動に積極的に関わっているエネルギーある先生方でさえ教員をやめてしまうかもしれない。子どもの教育において優秀な人材を失うリスクがあります。それに顧問の教員は、担任や教科担当とは違う立場から生徒を見ることができる特殊な立場にいます。生徒指導が顧問に任されることもありますし、授業中とは異なる生徒の一面を知っているという意味でも、子どもの成長や進路といった教育的側面では貴重な存在です」

加藤氏も、部活動を地域移行しても「問題が根本解決はしないことは明確」と悲観的だ。

「スポーツ庁などは、2023年度から『改革集中期間』としていた部活動の地域移行のガイドラインを『改革推進期間』と変更します。私は、これは事実上の取り下げだと思っています。そもそも部活動の存在自体が矛盾をはらんでいますから、そのまま地域移行をしても根本的な解決にならないのは最初から明らかです。必要なのは、部活動自体のスリム化でしょう」

部活動の運営状況も地域差が大きいのが実情だ。地域移行となれば、そもそも部活動の受け皿がない地域もある。すでに地域移行を積極的に推進している自治体や学校でも、教員以外が部活動の指導を担うにあたり、多くの課題が浮上している。

もはや現状の部活動に多くの問題があることには異論がないだろう。各地域の実態に合わせた対応が求められるが、その解決手段ははたして部活動の地域移行だけなのだろうか。

最後に加藤氏は、「今日の教育問題のほとんどが、お金をかければどうにかなるものばかり。しかし、この国はどうしても教育にお金をかけようとしません」と訴えた。結局、長年の教育行政の矛盾、教育投資の少なさのつけが回ってきているのだ。根っこを何とかしない限り、仮に部活動の地域移行が進んだとしても問題解決は画餅に帰すのではないか。塩多氏の「学校から切り離された部活動になるのであれば、僕は関わりたくありません」という言葉が胸に残った。

(文:崎谷武彦、編集部 田堂友香子、注記のない写真:尾形文繁撮影)

東洋経済education × ICT編集部

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小学校・中学校・高校・大学等の学校教育に関するニュースや課題のほか連載などを通じて教育現場の今をわかりやすくお伝えします。

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