ぶれない生徒指導の基準、保護者対応は信頼関係構築がカギ

出席者(Twitterのアカウント)プロフィール

合法先生さん @barbeejill3
公立中学校教員/働き方改革や学校問題などを発信。これまで4000人以上からDMで相談を受けてきた。
真由子さん @mayuko4460
部活顧問を拒否している中学教員。公立中学校の部活動制度のおかしさについて考えるブログも運営している。
のぶさん @talk_Nobu
中学教員から民間企業に転職。学校の理不尽さに苦しむ人を減らし、学校を変えたいという思いから、働き方、いじめについて発信している。

――教師の仕事にどんな魅力を感じていますか。

合法先生 やはり未来を担う子どもたちを育てることですね。生徒の成長を実感するとやりがいを感じます。

真由子 授業をするのが好きなので教材研究をした授業に対する生徒たちの生の反応を感じることができるのもうれしいです。

――のぶさんは教員から民間企業に転職しています。

のぶ 成長した子どもたちが卒業していくのは感動的で、やりがいも感じていました。一方で、やることが多すぎて、このまま学校で働くことに限界を感じていました。とくに一生懸命な先生が心身を病んでいくのを見ているのはつらい。学校を変えたいと思いましたが、それができる管理職になるまで現場にいるより、一度外から教育に関わってみようと考えました。

――教員の多忙さが問題になっていますが、現場でどんな悩みを感じていますか。

真由子 今は生徒が抱える課題が学習障害、朝に起きられない起立性調節障害などに細かく分類され、それぞれに応じた指導が求められるようになっています。よいことなのですが、教員が手厚い指導をするための体制や時間が確保されていません。また、保護者からの理不尽とも思えるクレームが増えています。いじめや暴力などの問題を起こして指導された加害側生徒の親が「学校の指導の仕方が悪い」と言ってきたりします。

合法先生 加害側の保護者からのクレームは、まさにあるあるですよね。私も今となっては、どういうときに保護者がクレームを入れてくるのかがわかりますが、若い先生はそういうわけにもいきません。保護者対応に時間がかかると、ほかの業務を圧迫することにもなるため、未然防止がいちばんの早道です。普段から保護者との信頼関係を大切にすることに加え、日頃から生徒との関わりに手を抜かない。何をしたら怒られるのかをきちんと示していれば、大きなトラブルもなくなり、指導にかかる時間も短くできます。

のぶ 保護者からの理不尽なクレームへの対応は、校長の考えもカギだと考えています。米国の学校では、「ダメなものはダメ」と規律違反への罰則適用を厳格に運用する「ゼロトレランス(寛容度ゼロ)方式」が導入されています。私が勤務した学校でも、暴れる生徒は学校に入れない、登校を認めても教室に入れず、別室で対応するという基準を守って学校を落ち着かせました。賛否があると思いますが、基準があいまいになって対応がぶれないように、管理職が明確な線引きをすることは、ほかの生徒や教員を守るために大切だと思います。

やりたくない部活動指導を断るのは正当な権利

――負担の重い部活動指導は、文部科学省からガイドラインも示され、働き方改革実現の大きなテーマになっています。

のぶ 大会で「上位入賞が当たり前」という強い部活動の顧問をしていたときは、平日は夜遅くまで、週末も遠征や練習試合という生活を送っていました。しかも部活動って生徒の指導だけではないんですよね。大会の運営会議があったり、審判で呼ばれたり。部活動があることで、自分がやりたいことに時間をかけられなかったというのが、転職を決断する1つの理由になりました。

合法先生 しんどさを感じながら部活動の顧問をしていましたが、やはりおかしいと思い、管理職と交渉して、ここ数年は部活動の顧問をしていません。私ぐらいの年齢で「顧問をやりたくない」と言えば、校長も対応せざるをえませんが、若い人が言ったら「やる気はあるのか?」となりますよね。国も部活動を「必ずしも教師が担う必要のない業務」に位置づけていて、拒否する権利があるはずですが、同僚からはよくは思われていないと思います。部活動を教員の仕事に含めるなら無償ボランティアではなく、相応の対価を支払うべきです。

真由子 私もこの数年、部活動の顧問をしていません。4月の顧問決めの際、校長は全員の名前を入れたがりますが、今は第2顧問も第3顧問にもいっさい名前を入れないでほしいと言っています。部活動の顧問は「教員の仕事のうちなので、やって当たり前」という空気の中での拒否は心理的負担も大きく、拒否する教員は希有な存在です。SNSのフォロワーはいても、リアルの学校で私に共感してくれる教員が周囲にいないのもつらいところです。

のぶ 最近では、文科省のガイドラインで部活動を平日2時間、休日3時間に制限しています。ところが、一部には意図的に制限を超えて練習時間を延ばす教員がいて……。こうした教員の好き勝手を許すと、保護者から「あの先生はやってくれるのに」という声が出て、逆にほかの教員がつらい立場に置かれ、負担軽減が進みません。

合法先生 実際、部活動指導が好きな教員はいますよね。部活動は希望した生徒だけが集まるので指導がしやすく、教師は有能感を持てるため、ある種の中毒性があると思います。生徒指導が難しい子も部活動なら指導しやすいという考えもありますが、本来は普段の授業などを通してすべきことです。

のぶ 現在、学校の部活動を地域に移行していこうという動きがありますが地域移行、外部委託は順調に進んでいますか。

真由子 外部委託には、生徒の引率も含めすべて任せるレベルと、引率する教員が必要でコーチは一緒に指導するだけというレベルがあります。大半は、教員が関わらなければならない後者のレベルです。顧問教員がいないときに生徒間のトラブルが発生して、結局校長が教員につねに一緒にいるように指示するといったケースもあります。

合法先生 外部コーチはスポーツの技術を教えることはできても、生徒間トラブルに対処できません。練習量を増やしたいコーチと意見が合わず、逆に教員の負担が増えたり、学校のことをあまり知らないコーチが禁止事項に触れてしまうこともあります。研修が必要だと思いますが、今は来てくれるだけでありがたいという状況なので強く言えません。私の周囲では、外部委託は無理だろうという声が多いですね。

「長時間働くのがよい先生」という文化が働き方改革を妨げる

――なぜ教員の長時間労働は改善されないのでしょうか。

合法先生 学校は世の中の動きに関心がありません。隣の学校がどうしているか、ということのほうを気にするムラ社会です。私は効率的に働いて定時に帰れるようにすべきという考えですが、学校では民間企業のように効率的に仕事をして早く帰ることは評価されません。

のぶ 管理職側が仕事を減らそうとしなければ、学校は変わりません。部活動の練習時間の件では、制限を守らない教員を止めない管理職にも問題があります。

合法先生 長時間働くのがよい教師という古い価値観の管理職世代は、労務管理をする気がありません。そのうえ、教員の間にも早く帰るとほかの先生に申し訳ないという雰囲気があります。それで学校に遅くまで残るための不要不急の仕事をつくり出し、仕事がどんどん増えてしまうのです。

真由子 教員間の同調圧力は確かに高くて、おかしいと思ってもやめられないし、効率よく働こうという感覚もありません。一方、管理職も長時間労働に対する感覚がマヒしていて、「文句を言わないから大丈夫」と仕事を増やします。「定時退校日」がありますが、まさに残業を前提としていることの表れですよね。

のぶ 現場を離れて思うのは、学校の変化が遅いのは仕組みに問題があるのではないかと。制度を整える側にある教育委員会が、現場を知らなさすぎて、学校との間に大きな考え方の違いがあると感じます。そのため、教育委員会の効率化の施策が、学校でスムーズに実行されないのだと思います。

――教員の仕事はどうしたら減らせるのでしょうか。

合法先生 国からは「学校以外が担うべき業務」「必ずしも教師が担う必要のない業務」なども示されています。生徒の校外での行動への対応は「学校以外が担うべき業務」。それなのに学校の外で生徒が問題を起こすと、学校に「何とかしてくれ」と連絡が来ます。本来は保護者や警察に連絡すべきものも多い。学校も指導はしますが、すべて学校任せにするのは違うということをわかってほしいですね。

真由子 教員の増員が難しいなら、教師の本分である授業や学級経営に集中できるように、あえて教師がやらなくてもよい仕事をやめて業務を減らすしかありません。私自身はプレゼンテーションソフトのスライドを使った効率的な授業、採点に時間がかかる提出物は最小限にすることなどを心がけています。職員室の机に提出物の束を積み上げて時間をかけてチェックするのが好きな先生もいますが、そこに時間をかけるべきなのか。効率的に働くための意識改革が必要だと思います。

のぶ 生徒指導で問題が発生すると対応に多くの時間がかかるので、それを防止するために学級経営の安定に時間をかけることが大切です。私は、そのために宿題や学級便りなど減らせる業務はとことん減らし、生徒と話をする時間を確保することを意識してきました。

――教員不足や教職志望者の減少が問題になっています。その解決に必要な学校の働き方改革を推進するには何が必要でしょうか。

真由子 教員のなり手不足は深刻で、欠員があると、ほかの教科の先生に臨時免許を発行したり、教頭が代行したりして埋めている状況です。長時間労働を敬遠する学生に対して、定時で帰ろうとすれば帰れる、部活顧問も希望者だけで強制されないといったことを保証し、安心して教員になれるようにすべきです。

時間にとらわれずに情熱的に働くのがよい先生だという「金八先生」的教師像が、教員に過度な負担がかかる背景にあります。今こそ働き方の意識改革を進めて教師像を転換すべきです。私自身は部活動の顧問をやらないと訴えたことで状況を変えられました。教員に必要なのは自ら行動する力と、声を上げる力です。それが流れを変えると思います。

合法先生 このまま教員不足が続くと、日本の教育はあと何年持つのだろうかという危機レベルにあると思います。採用活動で、やりがいばかりアピールするのはブラック企業のサインと学生に受け取られるのでやめたほうがいい。お金で解決できることは多いので、国が予算をつけて、教員の増員や待遇改善など条件面を整備しないと、状況はますます悪くなるでしょう。

のぶ 今の学校の労働環境は、多様な働き方やワーク・ライフ・バランスを重視するZ世代の考えと相いれません。教員勤務実態調査でも教員の時間外労働の多さは明らかです。根本の長時間労働の問題を改善しないと人は集まりません。変革には、自治体や管理職が強制力をもって業務削減を進めることも必要ではないでしょうか。教員が自身の理想と心身を守れるようにすることが先決です。先生方も国、教育委員会、管理職にとって「都合がいい人」にならないためにも、過剰な要求を断るための知識をつけてほしいですね。

(文:新木洋光、注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)