「吹奏楽文化」があと20年で消える?学校から「部活」切り離す前に考えたいこと 経済格差や地域格差を踏まえた総合的な判断を

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昨今の吹奏楽部をめぐる環境は、様変わりしている。文化部の中でも吹奏楽部は、比較的練習時間が長いといわれるが、教員の長時間労働や生徒の学業との両立問題も指摘される昨今、よりよい形で存続するためには何が必要なのか。あらゆる生徒が豊かな文化芸術を体験できる場としての部活動のあり方について、『日本の学校吹奏楽を科学する!』の著者である愛知教育大学教授の新山王政和氏と、習志野市教育委員会に勤務し一般社団法人全日本吹奏楽連盟理事長を務める石津谷治法氏が語り合った。

吹奏楽が生徒に与える力、吹奏楽が育てる人間性

───2018年に文化庁から発表された「文化部活動の在り方に関する総合的なガイドライン」(以下、部活動ガイドライン)では、「学期中は週当たり2日以上の休養日を設ける」「1日の活動時間は、長くとも平日2時間、休日3時間まで」などの指針が示されました。また新型コロナウイルス感染症の影響を受けて、20年の全日本吹奏楽コンクールは中止、21年はライブ配信で開催されました 。今、生徒たちはどのように練習しているのでしょうか。

石津谷 私の勤務する千葉県では、ほとんどの中学校が部活動ガイドラインを守り、短い時間で練習しています。コンクールや演奏会などの前は土日にも練習しますが、そうしたイベントが終わった後に休みをつくるなどしてやり繰りしている学校が多い印象です。

一般社団法人全日本吹奏楽連盟理事長 石津谷 治法氏
法政大学卒業。習志野市立東習志野小学校、習志野市立第四中学校、習志野市立第五中学校などを経て2000年、習志野市立習志野高等学校吹奏楽部顧問に就任。13年より習志野市立教育委員会学校教育部指導課に勤務。15年より習志野高校に復職し、19年3月に退職後も勤務。21年5月より現職
(写真:今井康一)

新山王 コロナ禍では、多くの学校で活動時間がかなり短くなっていますが、そんな中でもどうしたら効率よく練習できるのか、生徒たちのほうからも自主的に練習メニューを考えて先生へ提案するようになってきているようですね。

石津谷 一昔前は「日の出ているうちに帰るなんて教員じゃない」といった風潮がありましたし、部活動も過熱と言われるような状況があったと思いますが、今では世間が許しません。

新山王 「あの青春の時代をもう一度、僕が果たせなかった全国大会へ」と、コンクールの結果のみに過度にこだわる人は、今もいますね。

愛知教育大学 教授 新山王 政和氏
山口県防府市出身。山口県小郡町立小郡中学校講師、山口芸術短期大学ならびに宇部短期大学講師を務めた後、1992年に愛知教育大学教育学部へ赴任。2009年より同大学教授。コニカミノルタ・イメージング研究論文優秀賞受賞。日本学術振興会、ヤマハ音楽振興会、カワイサウンド技術音楽振興財団より研究助成認定。著書に『日本の学校吹奏楽を科学する!』「中学校吹奏楽部に関する8つの所感(日本音楽教育学会)」など
(写真:今井康一)

───「ブラック」「過熱」と言われるような一部の部活動は、コンクールの結果だけにこだわる傾向があったのでしょうか。

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