一斉一律に出される宿題について問い直すことが必要では?
では中学校ではどうなっているのか、ある公立中学校の教頭先生に話を聞きました。「新学習指導要領で評価の観点が変わり『学びに向かう姿勢』『主体性』『人間性』を見ていかなくてはならないが、現状は、宿題や提出物など従来の評価の観点から脱しきれていない」と言います。
中学校は高校受験にその評価が使われるので、ペーパーテストの見える学力による評価が重視される傾向にあります。また、全国学力テストの結果を重視する自治体もあり、それが教師の足かせになり、本来行われるべき、教科書で学んだことをどう地域の課題解決につなげていくのかという探究学習がなかなか進まないのが実態のようです。
そんな中で、その教頭先生は、「目指すべきは、子どもたちが自学できるように、学び方を学ぶ教育を行っていくこと。そのために必要なのは宿題ではなく、課題を出すことだ」と言い、そんな授業を工夫されているそうです。まさに、学校で学び方を学べば、社会に出てからも学び続けることができます。
本来、知らなかったことを知ることは人の喜びであり、学校に上がる前の子どもたちは「知りたい!」 という意欲と好奇心の塊です。でも、真新しいランドセルを背負って、ワクワクしながら学校の門をくぐった子どもたちの多くが、「勉強は楽しくないもの」「しなければならないもの」だと思うようになり、どんよりとした顔になって卒業していくとしたら、本当にもったいない。
個別最適化とか、ICTの活用とか言われ、教育を変えようという機運もある一方で、現場は従来のスタイルから抜け出せていないという印象を今回の取材でも持ちました。
宿題を廃止した岐阜市立岐阜小学校の記事にもありましたが、日本の教育現場で今さまざまな課題が噴出している中で、「自ら学ぶ力の育成」と「働き方改革」の両面から、子どもたちにとっても、先生にとっても学びを意味のあるものにしていくために、これまでそうだったからではなく、一斉一律に出される今の宿題について問い直すことが必要な時期にきているのかもしれません。
そのためには、先生だけでなく、保護者も、子どもも一緒になって、「宿題」をテーマに対話し、当たり前を見直す機会をつくれないか。今回の取材を通してそんなことを思いました。このサイトの読者は、先生・保護者などさまざまだと思いますが、この記事が、「宿題」について考えるきっかけになればと思っています。
(注記のない写真:タカス / PIXTA)
執筆:教育ジャーナリスト 中曽根陽子
東洋経済education × ICT編集部
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