まず、小学校の先生に話を聞きました。驚いたことに、取材をした先生は口をそろえて「理想は、宿題なしだ」と言います。本来家庭学習は、自分が学びたいことや、授業を受けて興味を持ったことをさらに深めるためにするものだと思いながらも、毎日宿題は出しているのだそう。目的は「学習の定着を図るため」がいちばん多く、定番は書き取り・計算ドリル・音読。大体15分くらいで終わるものを出していると言いますが、かかる時間は子どもによって差があるかもしれません。
中には、自学という宿題を出している先生もいました。これは、自分でやることを決めて何かしらに取り組みノートにまとめるというものです。子どもたちは、いろんなテーマに取り組んだという先生がいる一方で、多くは算数や国語が多くなるという声もありました。
面白いことに、話を聞けた先生は皆さん子育て中の親で、「学校の様子がわかるから子どもの宿題を見るのは楽しみだ」という声もあった一方で、「一親としては、こなすだけになっている宿題が本当に必要かは正直疑問だ」という人が大半でした。
また、ある先生は、自分の子どもには「宿題は 『約束を守る練習』 『締め切りを守る練習』 『信頼を積み重ねる練習』だ」と伝えていると話してくれました。確かに、そういう意味もあるのでしょう。けれど、本来「学び」ってわからないことをわかりたいという欲求から出てくるもののはず。できれば、家庭学習の時間が、子どもが「やりたい!」と思って勉強をする時間になってほしいですよね。
宿題の効果については、さまざまな研究があり、毎日のように出る宿題をやることにより、学習習慣の定着が図れるというメリットがある一方で、宿題の量と学力には、相関関係がないという調査結果もあります。
学校の授業で学んだことを家庭学習で定着を図り、その結果を分析して授業に生かすというループが回って初めて効果があるのでしょうが、先生にとっても毎日の宿題チェックはかなりの負担になっているようです。皆さん、朝や昼休みの時間を削ってこなしているのが実態。朝から晩まで、本当に休憩する間もなく仕事をされている先生の働き方改革という意味でも、宿題が再考される時期にきているのかもしれません。
でも、「宿題を出してほしい」という保護者もいて、先生としてはそういう声は無視できない。「宿題を出さないと、学力の定着が図れない子どももいる」「どんな宿題を出すかは個人の裁量だけれど、学年である程度内容や量をそろえる必要がある」など、さまざまなジレンマを抱えながら、「宿題は出すもの」というのが今の日本の公立小学校のスタンダードになっているようです。