立命館小学校・正頭英和「Minecraft」使った授業で英語を話す力が伸びるワケ 豊富な音声コンテンツを使い授業の組み立てを
教育×エンターテインメント=エデュテインメント
――ICT活用が当たり前になった時代を生きる子どもたちに、これから必要なのはどのような力でしょうか。
正頭:テクノロジーによって知識の差を埋められる現代では、「問題解決力」よりも「問題発見力」が求められていくようになると思います。これからは、「どれだけ暗記しているか」よりも、「得られた知識をどのように活用していくか」が大切で、それを考えるためには「問題発見力」が求められていくでしょう。
また、学校で学ぶ内容は、「知識」から「体験」にシフトさせていくことが必要になると思います。ICTを活用すれば「時間」と「距離」の制約がなくなり、例えば英語の授業では「日本にいながらにして米国のハンバーガーショップとオンラインでつながり、英語で自分の食べたいものを注文する」などといった「体験」が可能になるわけです。このような「体験」が土台となって感受性が育まれ、思考力や表現する力が身に付いていくのではないでしょうか。
――正頭先生は、コナミデジタルエンタテインメントがリリースした学校で使えるゲーム『桃太郎電鉄 教育版Lite ~日本っておもしろい!~』(以下、『桃鉄 教育版』)のプロデュースも担当されています。
正頭:『桃鉄 教育版』では、あえてあれこれ機能を追加せず、もともとのゲームの面白さを生かせるような仕様にしています。先生たちのアイデアを掛け合わせて、授業の中でクリエーティビティーを発揮してほしいですね。
今の子どもたちは、満たされた時代に生きています。“歯をくいしばって耐え抜く”教育から、“学びを楽しむ”教育への転換期に来ています。これからは、「エデュテインメント」(「エデュケーション」と「エンターテインメント」を組み合わせた造語)、娯楽でありながら教育に役立ち、「楽しみながら学ぶ」授業を充実させることが、本当の意味での子どもたちの学びに結び付いていくのではないでしょうか。
「英語をもっと話したい」と思えるような動機づけが必要
――ワールド・ファミリー バイリンガル サイエンス研究所(以下、IBS)では、正頭先生を招いて実践発表セミナーを行うなど、テクノロジーを活用した英語教育の研究もされています。

ワールド・ファミリー バイリンカル サイエンス研究所主任研究員
コロラド州出身、日本育ちのバイリンガル。中学・高校と日本て学生時代を過ごす。米コロラド大学に進学後、再来日。現在は沖縄に在住。第二言語習得、異文化や多言語環境、また幼児期からの早期英語教育に精通しており、最近ではVR/AIを活用した最先端の英語学習法研究のレビュー論文を発表。日本では入手困難な海外の先行研究事例や科学的実証に基づいた外国語教育情報を積極的に発信している
(写真:IBS提供)
ポール:英語教育とICTは非常に親和性が高く、IBSでは、中央大学と共同で、小学生のVR(仮想空間)英語学習に関するパイロット研究プログラムに取り組んでいます。
ゲームやパソコンに慣れ親しんでいる子どもたちにとっては、VRでさえも、“緊張感が少ない空間”なんですよね。教室で英語を話すのはちょっと恥ずかしいけれど、仮想空間のレストランに入って食べたいものを英語で注文したりすることに対しては、「ちょっとチャレンジしてみようかな」と思うようです。VRなどのICTを活用することで、英語を使うことに対する不安が減ったり、「こんなふうに話してみたい」などモチベーションの向上につながったりする効果が見られることを実感しています。
原田:モチベーションに加えて大切なのが、あるものと深く関わる「エンゲージメント」だといわれています。VRのようなICTを使って英語学習をすることによって、そこに直接入り込む=エンゲージメントが可能になるのも、英語×ICTの強みだと思います。