立命館小学校・正頭英和「Minecraft」使った授業で英語を話す力が伸びるワケ 豊富な音声コンテンツを使い授業の組み立てを

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正確な表現方法を知っているか知らないかではなく、その狭間で自分はどう表現するかを考えながらコミュニケーションを取りつつも、「○○○と伝えたい。でも△△△という言葉しか知らない」という状態になると、子どもたちの「知りたい!」というモチベーションは高まります。

そのタイミングを見計らい、授業の途中で5〜10分ほど「日本語タイム」を設け、「これを英語で言いたいけどなんて言うかわからないフレーズはありますか?」と呼びかけると「橋を作るってなんて言うんですか?」などと聞いてきます。子どもたちが知りたいときにすぐに教えることで、子どもたちは習ったことをその場で使い、それを聞いた友達がリアクションしてくれる。このような環境の中で、教えたフレーズが子どもたちの中にどんどん染み込んでいきます。

――マインクラフトを活用した授業は、子どもたちが能動的に英語を学びながら自律的に話す力を蓄えることができるのですね。

正頭:日本人が「英語が苦手」と感じる理由の1つは、「話すのが恥ずかしい」とか「間違えるのが嫌」など英語を積極的に使おうとしないことだと思います。マインクラフトを活用した授業では、子どもたちの目標が英語学習ではなく、「マインクラフトを使ってみんなで何かを作り上げる」ということ。

マインクラフトの世界に入り込むことで、英語で話す恥ずかしさよりも、楽しさとか、「間違えても何でもいいからとにかく英語でメッセージを伝えて先に進めたい」という意欲が勝るんですよね。楽しいことをやるために英語を使おうとするから、英語に対するハードルが極端に下がることが、この授業の最大の特徴だと思っています。

マインクラフトを活用した英語の授業の様子

優れたコンテンツを探し、うまく使いながら授業に取り入れる

――GIGAスクール構想で、子どもたちに1人1台の端末が行き渡るようになりました。改めて、英語教育においてICTをどのように活用していけばよいのでしょうか。

正頭:立命館小学校では2012年から1人1台端末が実現しましたが、教科の中でいちばんICT活用が進んだのが英語でした。小学校の英語教育の土台にあるのはリスニングだと位置づけているのですが、例えば夏休みの課題として英語の歌を家で聴いて歌えるようにしたり、自分のスピーキングを録音して客観的に聞いたりなど、デジタルデバイスで“音声”を気軽に扱えるようになったことは大きいですし、英語教育でICTを活用していくうえでの重要なポイントであると考えています。

学校の教科の中で、英語がいちばんコンテンツが豊富にあります。ですから、英語に関しては、「“ゼロイチ”で教材を作って授業を行う」というよりも、「優れたコンテンツを探し、それらをうまく使いながら授業を組み立てる」という発想が大切なのではないでしょうか。

――例えば、どのようなコンテンツがありますか?

正頭:今話題のところで言うと、OpenAIが開発したChatGPTや機械翻訳サービスDeepLですね。例えば、ChatGPTに「日本のお正月の遊びを英語で書いて教えてください」と言うとすぐに答えてくれ、それをDeepLに流し込んで「音声で読み聞かせしてください」と言ったら、それなりの抑揚をつけた音声で朗読してくれるわけです。「テクノロジーを追いかけるのがしんどい」と言われたら元も子もないのですが、テクノロジーは確実に進化しています。苦手意識を持たず、得意分野にしてしまうと、できることが各段に増えると思います。

Power Pointにも同時通訳機能があります。言語の設定が自由にできるので、英語の発音の練習もできますし、クラスルームイングリッシュという形で、先生が英語で子どもたちに話しかけ、英語による同時通訳の設定にしておくと、リスニングとリーディングが同時にできます。単語を覚えるのならQuizletというアプリがありますし、ゲームベースの学習プラットフォームアプリKahoot!もあります。

――英語はICTと親和性が高い教科だからこそ、授業にうまく組み込むことで、子どもたちも楽しみながら学べるということですね。

正頭:学校や先生によりICTの進み具合やレベルは異なると思いますが、第1段階として、「とにかく使う」、第2段階として「アプリを効果的に使う」など、ステップアップしていくことが望ましいと思います。ここで忘れてはいけないのが、ICTの活用により、「子どもたちの英語力だけでなく、ICTスキルも育てていく」という観点を持つこと。タイピングができるようになる、上書き保存やデータ共同編集などクラウドの概念が理解できるようになるなど、ICTを使っていきながらマスターしていくということも重要だと思います。

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