大物ユニコーン突如誕生、「時価総額」急騰の死角 スタートアップランキングに問われる正確性
株式の希薄化率1%未満の資金調達で、国内有数のユニコーンに急浮上する事例も。スタートアップランキングのあり方が今、改めて問われている。
ユニコーンを100社創出へ――。
政府の新しい資本主義実現会議が2022年11月にまとめた「スタートアップ5カ年計画」では、企業価値(時価総額)が1000 億円を超える未上場企業を意味するユニコーンを、現在の10倍の規模となる100社生み出すことを謳っている。日本はユニコーンの数で、アメリカやヨーロッパに見劣りするというのがその理由だ。
GAFAMの急成長ぶりを見ればわかるように、スタートアップが経済の牽引役になるのは論を待たない。だが、スタートアップ育成の目標をユニコーンの「数」に定めていいのか、足元では疑問が持たれるような事態が発生している。
希薄化率0.5%の新株発行でユニコーンに
「ユニコーンとして時価総額2000億円の評価を得て、資金調達を実施しました」
1月上旬、給与の前払いシステムの開発提供を手がけるADVASA(アドバサ)は、自社の時価総額が2000億円となり、ユニコーンに仲間入りすることを発表した。新株予約権を含めた潜在株ベースでの時価総額は2301億円におよぶ。
未上場企業の時価総額は一般的に、直近の第三者割当増資における株式の発行価格に、ストックオプション(新株予約権)など潜在株式を含めた発行株式の総数を掛けて算出される。株式の発行価格は、スタートアップと投資家の相対による交渉で決まる場合が多い。
ADVASAは2017年に創業、福利厚生ペイメントサービス「FUKUPE(フクペ)」を手がける。未上場の国内スタートアップ評価額ランキングでは、これまでトップ10圏外だったが、「STARTUP DB」を手がけるフォースタートアップスがまとめた2023年1月のランキングで一気にナンバー2へと躍り出た。
ADVASAのリリースによれば、給与のデジタル払いに対応していることなどが、資金調達における評価の対象となったという。GAFAMに続く技術トレンドとして注目される、ウェブ3を見据えた取り組みを行っていることなども強調している。
一方、リリースは時価総額が2000億円となった点を打ち出すものの、会社が増資で得た資金の額や新株の割当先、その使途などは明らかにしていない。さらに、増資時における株式の希薄化率をめぐり、複数のスタートアップ関係者からは「ユニコーンとは名ばかりの資金調達ではないか」と懐疑的な声が挙がっている。
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