ギフテッドではなく「特異な才能のある子」、個別最適な学びの中で支援へ 文科省23年度予算案で8000万円を計上したワケ
具体的には「拡充三つ組みモデル」というタイプⅠ〜Ⅲまでの学習体験を柔軟に組み合わせて実践する。タイプⅠは授業の中で子どもたちの興味・関心を喚起するテーマを与え、タイプⅡでグループ活動による協働的な学びでテーマに関する知識・技能を習得。タイプⅢにおいて個人、あるいはグループで習得した知識・技能を活用した探求を行い、最後にその成果を発表することでほかの児童生徒が新たな興味・関心、知識・技能を拡充していくという方法だ。
すでに山形県の天童市立天童中部小学校では、SEMの理念・方法に通じる4つの授業スタイルを採用しているという。「(仲間と教師で創り上げる)通常の授業」、到達度・学習時間などの個人差に応じるために子どもが自らの判断と責任で自由に学習方法を決める「マイプラン学習(単元内自由進度学習)」、興味・関心や生活経験の個人差に応じるために学習方法・内容を子どもたちが決め、担任と相談しながら活動する「フリースタイルプロジェクト(個人総合)」、そして「自学・自習」だ。
授業時間数は通常授業が8割、そのほか3つの授業が2割で、「一⼈で活動し学ぶことが⾃信や⾃⼰有能感を⾼める」ことにつながったり、「不登校傾向の⼦どもたちも2割の授業へ積極的に参加」したりするなど、さまざまな成果が表れている。また、子どもたちの学習意欲の高まりが大きく、教師の授業への向き合い方も変化しているという。
「こうした個別最適な学びの成功事例を数多く示したり、ICTを最大限に活用したり、教育委員会がハブとなって学校と学校外のプログラムを連携するモデルを作ったりすることで、先生の負担を極力少なくしてインクルーシブ教育が進展していくと思います」
「A rising tide lifts all boats.(上げ潮はすべての船を持ち上げる)」という言葉がある。経済やビジネス分野でよく使われるフレーズで、好景気なときは誰もが恩恵にあずかれるという意味だ。教育のシーンにおいても、全体を底上げすることで、個の才能が浮かび上がり、一人ひとりがきらめくような指導・支援が実践されていくことを願いたい。
(文:田中弘美、注記のない写真:Fast&Slow / PIXTA)
東洋経済education × ICT編集部
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