ギフテッドではなく「特異な才能のある子」、個別最適な学びの中で支援へ 文科省23年度予算案で8000万円を計上したワケ

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ただ、一般的に子どもが知能検査を受ける機会は少なく、単にIQが高いという子どもならば潜在的にはもっといるはずだ。とはいえ、IQでギフテッドの子を特定できるわけではなく、ギフテッドを診断するアセスメントツールがあるわけでもない。「突出した才能とは何なのか」と考えたときに、さまざまな分野の才能を捉えようとすると、これまでのイメージが付きまとうギフテッドで議論すると混乱を招くと有識者会議では判断したのだ。

22年9月、有識者会議は特異な才能のある児童生徒への指導・支援に関する取り組みの基本的な考え方や、有識者会議として想定する学校教育のあるべき姿、その実現のために取り組むべき施策を総括した「審議のまとめ」を公表している。

「特異な才能のある子に対する指導、支援とは何か。その周知、研修の手始めとして、学校の先生向けに作成した映像教材が独立行政法人教職員支援機構のウェブサイトで2月に公開される予定です」と松村氏は話す。

米国でも「ギフテッド」ではなく「アドバンストラーナー」に

今後、才能のある子どもたちに対して、学校はどのような指導・支援を行うべきか。その大前提として、才能のある子ども、才能と障害の両方がある子どもが、どのような能力を持っているのか、その才能あるいは障害ゆえに学校で何にどう困っているのかを知る必要がある。

それを調査・報告したのが「有識者会議(第4回)アンケート結果まとめ」だ。これを見ると「生後10カ月で日本語と英語でしっかりコミュニケーションが取れる」「小3から中学数学、小5で数ⅡBを理解」「4歳で進化論、8歳で量子力学や相対性理論を理解」など、秀でた才能の一端をうかがい知ることができる。

その一方で「授業がつまらなくて登校を渋る・不登校になる」「みんなと違う部分が強調され、いじめの対象となりやすい」「早熟な知能に対して感情のコントロールが未熟」「授業を重ねるたびに無気力かつ反抗的になる子どもに対し、(教師が)怒りを感じ問題児扱いし、授業態度を叱責する」など、学校生活を送るうえでの苦難が浮き彫りになった。

もちろん、才能がある子がみんな、困っているわけではない。2Eの子であっても、周りの理解を得て学校になじんでいる子もいる。大切なのは、すべての子どもたちの可能性を引き出す個別最適な学びと協働的な学びを実現することだという。

「特異な才能のある子」の具体的な事例
・ひらがな、カタカナの読みは3歳で完全に理解しており、漢字のフリガナも読んだのでそこから漢字もどんどん覚えた。語彙も年齢相応以上に豊富。100 ページほどの本なら1〜2時間で読む。図鑑などの内容もはっきり覚えている
・3歳には本から九九などの計算を理解。小3の今は、独学で高校や大学レベルの数学を学ぶ。高校や大学初学レベルの統計検定3級合格。プログラミングや科学的知識も中高レベル
・4歳の頃から図鑑や自然科学系の本を読むことに没頭。5歳の頃から自ら仮説を立てて研究を開始、6歳で全国規模の自然科学コンクールで入賞。7歳で大学の研究施設で研究をさせてもらい新発見のデータを出したため今後、地域の学会や博物館の子供学会で発表予定
・6歳で初めてピアノをひいた時に両手でひけた。ピアノで色々な和音を出して「コード」を自分で見つけていて、後にコード表があるのを知って驚いていた。聞いた音楽を耳コピできる
・幼少期から言語習得が早い傾向があり、大人との会話を好んでいました。興味を持ったことを主体的に深く追求でき、それによって身に付けた発想力と、アイデアを具現化する技能について評価されることが多くありました
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