自分の気持ちを表現し合う「演劇教育」が子どものコミュ力を育てる訳 子ども創作舞台演出家・むらまつひろこに聞く

小金井市教育委員会 教育長
大熊氏が続ける。
「演劇教育は、答えのない問いを探すのにとても大切なツールです。子どもたちは、今回のような体験を通し、自分の中にあるモヤモヤを言語化し、言葉や動作などで表現することを学びます。そこで大切なのは、『自分の表現が相手に伝わっているか』について考えるということ。相手に伝われば、相手の心が動き、その子なりの表現が新たに生まれますが、相手の心を動かしていないと感じた場合は、自分の表現方法を変える必要があります。
試行錯誤を重ねながら、『どうやったら相手に伝わるか』を考え続けること、自分の考えと相手の考えを掛け算してよりより舞台にしていくこと。演劇教育を通してこのような経験を積み重ねていくことが、問題解決能力の向上につながるのではないかと思います」
プロジェクトスタート初日から会場に駆けつけ、「自分の気持ちを言葉にして、形にして、人に伝えて、相手の気持ちを動かすこと」「劇をつくることを通して、人とつながる力をつけること」の大切さを参加者全員に伝えた大熊氏。
ワークショップにも、時折“飛び入りスタッフ”として参加し、子どもたちと一緒に声を上げ、体を動かしながら子どもたちの表情の変化を洞察。それをスタッフにフィードバックする。子どもたちが成長し、「見る人の心を動かす舞台づくり」というゴールに向かって伴走する、心強いサポーターだ。
共感的対話の大切さ
近年、日本の子どもたちはほかの先進国と比較し自己肯定感が低いことが指摘されている。子どもだけでなく親も自分に自信が持てず、子どもとのコミュニケーションに悩む保護者も少なくない。
1児の母親でもあるむらまつ氏に、演劇教育の視点から、親子のコミュニケーションについてメッセージをもらった。
「保護者の方は、わが子を心配する気持ちから、子どもへの語りかけが『早く宿題しなさい!』など“指示”や“命令”になってしまいがちです。子どもも保護者も、『うれしい』『悲しい』など自分の感情や気持ちを親子間で伝え合えるようになれたらいい、と思うんですよね。
そのためには、ほんの少しでいいのでわが子への視点を変えること、『YES but』=『いいねー、でもさー』ではなく『YES and』=『いいねー!』の感覚を持つこと、子どもを“褒める”のではなく“認める”こと、この3つが大切だと思います。共感的対話は親と子をつなぎ、これを積み重ねていくことで、子どもも保護者も元気になっていきます。
演劇教育の活動を通して、これまで子どもが心にふたをしていた心の奥の言葉を保護者の方が聞くことで、『この子は大丈夫、生きていけるんだと信じられるようになりました』という声をよく聞きます。親子のコミュニケーションが良好になると、社会もうまく回り始めるのではないでしょうか。多くの子どもたち、保護者の方にこの演劇教育を体験していただきたいと思います」
(注記のない写真:今井康一)
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