子どもが描いた「絵が動く」今どき図工授業の斬新 ICTが表現の幅を広げ意欲的に学ぶきっかけに

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東京・新宿区立富久小学校の図工教員・岩本紅葉先生は、図工×ICTで教科横断型の授業に積極的に取り組み、教育界のノーベル賞と称される「Global Teacher Prize 2020」(以下、グローバルティーチャー賞)で、ファイナリストTOP50に選出されるなど注目を集めている。「音楽鑑賞をしながらプログラミングツール『Viscuit(ビスケット)』を用いてそのイメージを動く絵に表す」など、図工の学習に独自の視点でICTを取り入れ、子どもたちの感性を豊かに育む。公立小でも実現可能なICTを活用した図工の授業の実践とそのヒント、岩本先生の図工専科教員としてのスピリットを探った。

「Viscuit」で“図工×プログラミング”の授業を実践

ここは、東京・新宿区立富久小学校3階の図工室。3、4時間目が図工の授業という2年2組の児童27名が、3人1組のグループに分かれ、着席している。机に置かれているのは、マイクロソフトの「Surface Go2」だ。

「今日は、パソコンを使って『ふしぎなたまご』をつくっていきましょう。みんな、パソコンは起動できましたか?」

児童が立ち上げたタブレット端末の画面に現れたのは、プログラミングツール「Viscuit」。「画面上に自分で描いたたまごの絵をタッチすると、たまごが割れて何かが産まれる」というオリジナルの作品をつくる“図工×プログラミング”の授業の始まりだ。

3時間目は、お絵描き画面の「えんぴつボタン」で描いた絵を、プログラミングの指示を出す「めがねボタン」を操作しながら回転させたり、絵を変化させたりする“練習”を行った。児童はそれらを踏まえ、どんなたまごを描くか、割れたたまごから何が出てくるのかを自由に考えながら、思い思いのペースで作品をつくっていく。

画面に向かい、一心不乱に作品づくりに没頭する子。

「あれ? 画面が閉じちゃった」

「めがねボタンってどう使うんだっけ」

など、困り事を先生や周りの友達に聞きながら進めていく子。富久小学校の図工教員・岩本紅葉先生はそれぞれのテーブルをゆっくり回りながら、「どうすれば絵が変わるのかな?」などと声をかけながら、児童が自ら手を動かし、何度もやり直しながら試行錯誤を重ねる様子を見守る。

一人ひとりの画面に現れる、大きさ、色、形、数などさまざまなたまご。たまごを割ると、ぴょこんと出てくるのは、クジャク、カメ、恐竜、お花……。27通りの「ふしぎなたまご」が次々と完成していく。

パソコンを使って、たまごを描き、割れたたまごから何かが出てくる「ふしぎなたまご」をつくる子どもたち

作品づくりの終了を告げるタイマーが鳴ると、「終わったグループから作品を写真撮影するので、声をかけてね。次の図工の時間に、みんなで作品の鑑賞会をします」と、岩本先生。

児童はみんな「やり切った!」といった充実の笑顔。慣れた手つきでタブレット端末の電源を切り、「ありがとうございました!」と元気にあいさつし、教室に戻っていった。

「ふしぎなたまご」は、もともと、色画用紙や紙テープ、クレヨンなどを使い、たまごから産まれてくるものを想像しながら制作する“アナログ”の題材であるが、「『Viscuit』を使って作品が動くようにすると面白いかなと思い、授業に取り入れました」(岩本先生)という。

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