「iPhone工場暴動」で始まった"中国モデル"の破綻 ゼロコロナ政策で国民の不満は爆発寸前
習が歩み寄りの姿勢を打ち出せなければ、世界の工場として世界経済の成長を牽引してきた中国の地位が揺らぐことにもなりかねない。多国籍企業の中にはすでに、他国での製造拠点拡大を検討しているところもある。
「鴻海(ホンハイ)精密工業(の暴動)で私たちが目にしているのは、『中国モデル』の破綻だ」と北京の政治アナリスト、呉強は言う。問題となっている中国内陸部のアイフォーン工場を運営しているのが台湾の鴻海で、その工場では世界のアイフォーンの約半数が生産されている。「製造大国としての中国のイメージの崩壊だ。中国とグローバル化の関係も崩壊している」と呉は話す。
注目されるのは、鴻海の工場で起きた暴動がほかにも広がっていくのかどうかだ。11月下旬に暴動が発生する前でさえアップルは、無計画なロックダウンによる生産の混乱で売り上げに影響が出ていると警告していた。アナリストらはアイフォーン14プロと同プロマックスの納期はさらに遅れると予測している。
「政府がゼロコロナ政策を続けるとしたら、鴻海(で起きたこと)は始まりにすぎない。ほかにも似たような状況に陥る工場は出てくるはずだ」と、ニューヨークを拠点とする中国人労働者の権利擁護団体チャイナ・レイバー・ウォッチの創設者でエグゼクティブディレクターの李強は言う。
iPhone工場で勃発した暴力と流血
ホンハイの労働者はボーナスの支給遅れに加え、新規採用した労働者をコロナ陽性となった労働者から適切に隔離しなかったことに怒りの矛先を向けている。最近新たに労働者が採用されたのは、同工場で10月に集団感染が発生し、何千人という労働者が逃げ出したためだった。
ニューヨーク・タイムズの取材に答えた4人の労働者によると、22日夜から23日の夜明けまでに、数千人の労働者が警察の機動隊や公衆衛生当局者と衝突したという。抗議活動の参加者はバリケードを破壊したり、配給される食料を盗んだり、フェンスの断片を当局者に投げつけたりした。