中国では現役世代の貯蓄率が低い。だがそれは見かけ上のことで、住宅購入が貯蓄の機能を果たしている。
先日、久しぶりの対面開催となった中国関係の学会に参加した。そこで、家計部門の貯蓄率の動向が長期的な経済動向に与える影響について興味深い議論が行われた。
人々の貯蓄行動に関する最もオーソドックスな理論であるライフサイクル仮説では、人々は現役の時に得た収入の一部を貯蓄に回し、リタイアした後にそれを取り崩して消費を行う。したがって、社会の高齢化が進み、現役世代の人口比率が下がれば貯蓄率は低下し、それが金利の上昇や投資の低迷を通じて成長率の鈍化をもたらすはずだ。筆者もこれまでそう考えてきた。
貯蓄率のU字型
しかし、中国で実施されている各種の家計調査は、それとは矛盾する現象が生じていることを示している。例えば中央大学の唐成教授はその著作の中で、西南財経大学が実施している中国家庭金融調査を用いて、世帯主の年齢階層別の貯蓄率の推移を分析した。
その結果、年齢と貯蓄率の関係について、貯蓄率は若年層と高齢者世帯ほど高く、30代から50代の現役世代ほど低くなる、いわばU字型の関係が見られるという指摘を行ったのだ。
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