人間関係のストレス減、対話で「NVC」非暴力コミュニケーションが注目のワケ NVCが互いに共感できる協力的な関係に変える
こうした意図をもって対話をするためにはどうすればいいのか。その前提として、NVCでは「観察(Observation)」「感情(Feeling)」「大切なもの/ニーズ(Needs)」「リクエスト(Request)」という4つの要素を使って、自己の内面を探っていく。
相手と対話するとき、とくに大人は感情を抑えることが多く、怒ったり、ネガティブなことを言わないようにする傾向が強い。その結果、自分の心の居場所がなくなってしまうことがある。今井氏のワークショップでは、こうした不満の感情の奥に大事なことがあるということを対話型かつ共感的な姿勢で解きほぐしていく。
「何か起こったときや言われたときに、自分の中に起こる反応や感情を受け止める、そうした自己受容につながる視点を持つことができます。そのため、人に何か言われたとき、反応している自分に気づき、実際に起こったことが何か、そしてそれをきっかけに浮かんだ考えや解釈は何かということに気づく、観察の視点に、まずつながります。そして心に浮かんでくる感情やニーズに意識を向け、本当はどんなことを大事にしたいという願いがあったのかを深く探っていくのです。
例えば、相手と対立したら感情に流され、“そんな言い方しないで”と言いたくなるかもしれません。そんな自分に気づき、 “本当はこれを大切にしたい・分かち合いたい”という自分本来の願いに、内省的に耳を傾けていくことができるのです。NVCには観察・感情・ニーズ・リクエストという4つの要素がありますが、私のワークショップでは、まずお互いに「聴きあう」ことを通じて、“自分の大事なことをわかってもらえるというのはこんな感じだったのか”ということを体験する探求の場を提供しています」

(写真:今井氏提供)
NVCでは褒める代わりに「感謝を伝える」ことを勧めている
こうしたNVCの共感的なコミュニケーションを繰り返していくことで、どんな感情に対しても自分で受け止める耐性ができるという。この視点を身に付けることが大事だと今井氏は指摘する。
現在、このNVCは国内でも少しずつだが、学校の校内研修などでも取り入れられるようになっている。例えば、東京の私立かえつ有明中・高等学校では教員同士のコミュニケーションでマインドフルネスを実現させるために、教員研修にNVCを導入しているという。
一方、海外ではどうか。例えば、韓国ではNVCが社会で普及しており、学校に「共感的なつながりをつくるための部屋」を設置し、もし生徒同士がけんかしたときは、NVCを学んだ大人から話を聞いてもらい、自分自身の怒りや相手に対する敵対意識を受け止めてもらうことで、生徒同士が共感的なつながりを持てるようにしているところがある。また、ベルギーでも学校のほか、青少年育成施設、難病の子どもたちに対して、NVCを伝えているという。