学外の視聴者も増加、とある私大職員が「奨学金YouTuber」を兼務する訳 札幌大・水戸康徳が語る「学生が陥る落とし穴」

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奨学金を利用する学生が陥りがちないくつもの「落とし穴」

現在、1人でYouTubeチャンネルの運営を担う水戸氏。動画制作もYouTuberの経験もなかったが、「もともとパソコンやタブレット端末を扱うことは好きで、高校・大学での演劇活動で学んだ話し方も役立っている」そうだ。

「毎回新しい機能やアクションを試し、視聴回数や滞在率など細かいデータ分析を行い、動画の構成や見せ方、公開のタイミングなどをつねに工夫・改善をしています。学生が何かわからないことがあった際に、いつでもアクセスできる状態を目指して編集しています」

説明会の担当者としてコロナ禍前から一貫して大事にしているのは、「学生が実感しやすく、わかりやすい説明」だという。JASSOの公式情報は難解で、どこが大事なのかがつかみにくいからだ。水戸氏は、学生の「わからん」を、何とか「わかる」に変えたいと強く思っている。

JASSOの奨学金制度は、複雑で難解だ

「いきなり目次のない事典を渡されて『全部読めばわかるから』と言われたら途方に暮れますよね。奨学金制度を知るというのは、そんなイメージなんです。そもそも奨学金に対してネガティブな感情を持っている人も多いと思うので、動画も対面も、淡々と情報を読み上げて『伝える』のではなく、『伝わる』ことを意識しています」

水戸氏は、動画は何度も見直せるツール、対面は「ちゃんと手続きしなければ」という気持ちを醸成する空間と捉え、それぞれの特性に合った情報伝達を心がける。しかし、いずれも目指すところは「学生が自分で奨学金を理解し、手続きができるようになること」。そのため、対面・動画ともに説明会の実施前後のフォローも丁寧に行う。

「実施前の告知はもちろん、実施後には参加者と欠席者に分けて次に取るべきアクションを伝えるなど、イベント会社並みに通知メールを送ります。その結果、動画説明会の視聴回数は増え、対面説明会の参加率も上昇しています。それでも反応がない学生には電話をかけるなど、1人ひとりのフォローに努めています」

ここまで支援に力を入れるのは、奨学金制度の知識や理解が不足しているために、退学になってしまう学生を何人も見てきたからだ。制度が難解であるがゆえ、学生にとっての落とし穴もたくさんある。

例えば、給付型と貸与型の第一種奨学金を組み合わせて使うと「併給調整」されて第一種が0円になる場合もあるが、それを知らずに入学して「第一種が入金されない」と慌てる学生が少なくない。給付型の支給が止まったときなどに初めて第一種が振り込まれる仕組みなのだが、そういった詳しい説明を高校で受けていないケースが多いという。

「給付型奨学金と授業料減免についても、お得ながら不安定なものであることがあまり周知されていません。毎年10月に課税額に基づく支給額の見直しがあるため突然支給額が減ったり支給が止まったりするほか、出席率やGPA(平均成績)の基準に満たず卒業まで持たない学生も。だから進学後に申し込む在学採用の学生にはそういうリスクも最初に伝えますし、高校生向けの動画も作って情報発信しています」

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