時代に合わせた授業改革もカギ、多忙でも17時に帰る「公立教員の時短術」 保護者対応も凄い「庄子寛之流マインドセット」
一方、いくら保護者とのやり取りが便利になっても、教員が最も時短が難しいと感じている仕事は、保護者対応ではないだろうか。対応を誤れば、話がこじれて時短どころではなくなってしまう。どんな保護者との対応も楽しく、トラブルがないという庄子氏にクレーム対応の秘訣を聞くと、こんな答えが返ってきた。
「学校に何かを訴えるというのは、すごくエネルギーが要ること。そもそも困ったことがあるから意見をするのであり、いわゆるクレーマーと言われる保護者は『困った人』ではなく、『困っている人』なんです。しかし、それ以前に保護者は子育ての先輩です。先輩から学ばせていただくという感覚で接することが大事ではないかと思っています」
そんな庄子氏の対応は、とにかくマメで丁寧だ。寄せられる保護者の意見はもちろん、保護者に対するアンケートの自由回答にも1つひとつコメントを返す。その際には、その保護者の子どもの長所や最近の活動状況など、必ずプラス面を書き添える。
学級通信も前述のとおり、保護者が普段見られない学校生活の様子を知るツールという認識で、毎日発行している。教員の誰もがまねできることではないかもしれないが、保護者に誠実に向き合う姿勢は学ぶべき点が多いのではないだろうか。
研修のテーマは「1人の10歩より、10人の1歩」
学校の長時間労働は、職場レベルでも改善を進める必要がある深刻な問題だ。庄子氏の学校では以下のような形で取り組んでいるという。
「16時前に6時間目が終わる学校もありますが、本校の6時間目の終了は14時50分。掃除の時間をはじめ今までの『当たり前』を見直したわけですが、その分、児童の下校後に行う会議の開始時刻が早まり、教師が校務に使える時間が増えました。必要な連絡はすべてGoogle Classroomで共有することで会議での無駄な確認を省き、現在、朝会はなく週2回の夕会で済んでいます」
職場全体で何かに取り組むには、心理的安全性を保つことも大切だ。庄子氏の学校では、職員室の飾り付けを時々変える、オリジナルのおみくじや差し入れを置いておくなど、気軽に雑談できる環境を教員たちが自主的につくっているという。

また、「時間があるから学ぼう」という雰囲気も生まれているそうだ。例えば、参加は任意だが週に1度ICT研修会を開き、アプリの活用紹介やICTを使った授業の報告など実践的な事例をみんなで共有している。このほか、1冊の本を約10ページずつ分担して作った要約を並べ、回し読みするというユニークな研修も。
「この方法だと、全員が30分程度で本の内容を学ぶことができます。1人の10歩より、10人の1歩のほうが、より前に進める。そんな思いで取り組んでいます」と、研修主任を務める庄子氏は言う。

このようにさまざまな角度から時短に取り組む庄子氏だが、個人でできることには限界があり、教員も時代に合わせて柔軟な働き方を許容されるべきではないかと考えている。
「一般企業でテレワークができている現状を考えれば、学校でもできないわけはありません。いったん帰宅した後にオンライン会議をできるようにするだけでも、リフレッシュして生産性が上がると思うんですよね。教員はまじめなので自由度を高めてもさぼったりしません。学校外の活動がある教員のほうが魅力的ですし、ある程度自由に動ける時間が取れることは大事ではないでしょうか。もう教員はみんな十分すぎるほど頑張っているので、そういった柔軟性が許されない以上、業務を精査し、誰かに助けを求め、つねにご機嫌でいることが大切ではないかと思っています」
(文:田中弘美、写真:庄子寛之氏提供)
東洋経済education × ICT編集部
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