豪華列車「雪月花」、強気の5000円値上げの勝算 えちごトキめき鉄道が食事をリニューアル

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「今回リニューアルを行ったのは、『えちごトキめきリゾート雪月花』の運転開始からそれなりの時間が経過して、現在では他の鉄道会社さんでも、さまざまな観光列車が運転されるようになった。そのような中で、それでは『雪月花』を、他社の観光列車に負けない、さらに魅力的な存在にするには、どうしたら良いのかという問いに対するものです。

もちろん、『All made in 新潟』という、この列車の基本的なコンセプトは何も変えません。その上で、足踏みではなくステップアップを果たしたいということです。料理は食材に何を使うかまでをイチから考え直し、使う食材もこれまでより大幅にグレードアップしています。そのことから、料金についてもこれまでよりアップしているのですが、新潟まで観光列車に乗りに来て下さるお客様であれば、価格の違い、その意味は了解してくれるだろうと考えています。

また、今のコロナ禍が収束した後に、インバウンドのお客様が来ることもあるだろう。その時に、現在の日本は海外から来るお客様から見れば、お金を使いやすい国であるはずだ。そのお客様に喜んで頂くためにも、安かろう悪かろうの商品をお出ししてはいけない。やはり、相応の対価がつけられていたとしても、きちんとお客様を満足させることができる商品をお出しすることが大切であると考えています」えちごトキめき鉄道の鳥塚亮社長は、今回のリニューアルの背景を、そう説明する。

「いすみ鉄道」時代の経験を生かす

「安かろう悪かろうではお客様に本当の満足を与えることはできない」。実はこのスタイルこそが“鳥塚流”である。氏が以前社長を務めていたいすみ鉄道でも、「レストラン・キハ」という名の観光列車が運転され、車内でイタリア料理のコースが提供された。価格をいくらに設定するか。もちろん、それなりの食材を使って、ファミリーレストランと同様の廉価な食事を提供することもできる。しかし、氏がその策を採ることはなかった。

「もちろん、3000円のメニューを考えることはできる。けれどもそれで、遠来のお客様を本当に満足させることができるだろうか。それなら少し値が張ったとしても、誰もがおいしいと思うものをお出ししたい。きちんとした対価が得られるのであれば、料理を作るコックさんも、誇りを持って仕事を続けることができる。料金が少し高かったとしても、お客様が満足できるだけの環境を作ることが列車を運転する会社の仕事であり、集客もまた会社の仕事である」。いすみ鉄道時代の鳥塚さんは、「レストラン・キハ」のコンセプトをそのように語っていた。

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