車に草刈り鎌を載せてたら"逮捕"70歳男性の悲劇 銃刀法違反の「濡れ衣」で強いられた理不尽

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「北邦野草園」事件を扱った旭川地裁では、検察側、弁護側の双方ともこの最高裁判決を引用した。そのうえで、検察側は「近日中に使用する予定はないとのことだった。正当な理由はない」と主張。弁護側は「1週間以内にいとこの草刈りや廃材処理で鎌とノコギリを使う予定だったため、正当な理由がある」と主張し、真っ向から対立した。

検察側は「2カ月という長期間にわたり、携帯し続けていたことから悪質」とし、罰金10万円を求刑した。

旭川地裁の判決は、2021年12月だった。男性が北邦野草園で警察官に声を掛けられてから、すでに2年2カ月。男性はこの間、「海外にも行けない。人権もない」と感じていたという。

年の瀬が迫る法廷で、三澤節史裁判長は「被告人は無罪」と口を開いた。0.2%にも満たない「無罪」が現実になった瞬間である。

そして裁判長は、次のように判決理由を述べた。

「(摘発の)2カ月前とはいえ、正当な使用実績が裏付けられていて、数日後に従前同様の使用が予定されている刃物について、自動車内に刃体に新聞紙を被せる(のこぎりにはさらに内側にビニールカバーを被せる)形で搭載していた被告人の行為については、業務その他正当な理由があったと解されるべきである」

検察は控訴を断念し、無罪が確定

男性は「検察は控訴するだろう」と構えていたが、検察は控訴を断念した。北海道新聞2021年12月28日朝刊によると、旭川地方検察庁の森幹次席検事は「判決および証拠を精査したが、控訴審で判決の認定を覆すのは困難と判断した」とコメントした。

男性の代理人、中村元弥弁護士は検察に対し、「何カ月も被告人の地位においたことを猛省していただきたい」と話し、控訴断念について「高裁でこの判決が確定して大きく取り上げられると影響が大きいので避けたいと考えたのではないか」とみている。

中村元弥弁護士
男性の代理人を務める中村元弥弁護士(筆者撮影)
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