アステラス、大試練の遺伝子治療薬に捨てぬ希望 安川社長、開発計画中止続出に「まだ種はある」

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巨額買収に懸けた遺伝子治療領域で、誤算が相次いでいるアステラス製薬。今後も開発を続ける方針に変わりないのか。安川社長を直撃した。

アステラス製薬の安川社長
誤算が相次ぐ遺伝子治療薬の開発について、安川社長は「やめるとか、縮小しようといった議論はない」と語った。写真は2021年9月(撮影:尾形文繁)
製薬業界2位のアステラス製薬。大黒柱は、全社売上高の4割を占める前立腺がん治療薬の「イクスタンジ」だ。しかし2027年頃の特許切れを控え、次の柱の育成が急務となっている。
同社は成長ドライバーとして、研究開発における4つの重点領域を定める。その1つである遺伝子治療では、2020年に3200億円の巨費を投じ、同領域に強いアメリカのオーデンテス・セラピューティクス社を買収した。
買収当初、オーデンテス社で臨床試験(治験)が最も進んでいた新薬候補は、2020年の承認申請を計画していた。しかし大幅に遅延する見込みとなり、2020年度と2021年度に計約900億円の減損損失を計上した。
その後も遺伝子治療領域では、治験中止や差し止めといった誤算が続いている(記事:「巨額買収の遺伝子治療で相次ぐ誤算」はこちら)。遺伝子治療を重点領域とする方針に変わりはないのか。安川健司最高経営責任者(CEO)に聞いた。

治験差し止めの新薬候補は劇的な効果も

――6月に遺伝子治療薬候補の「AT845」について、アメリカ食品医薬品局(FDA)から治験差し止めの指示がありました。これは誤算だったのでは?

治験を行う過程で重大な副作用が出てしまったため、その旨をFDAに報告をした。今後の対応についてはFDAからの指示に従うしかない。

このようなリスクはいつでもある。FDAは、患者の安全性を担保しなければならない。リスクとベネフィットのバランスがおかしいと彼らが判断すれば、一度治験を差し止めて追加データを出したり、投与対象者の選定基準を考え直したりするのはやってしかるべきことだ。

――開発が最も進んでいた遺伝子治療薬候補の「AT132」も、2021年から治験が差し止めとなり、巨額の減損損失を計上しました。

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