アステラス「巨額買収の遺伝子治療」で相次ぐ誤算 ほとんどの候補薬の開発がペンディング状態に
2020年に約3000億円の買収を行い、遺伝子治療でのリーディングポジション確立を目指したアステラス。しかし目算が狂う事態が続いている。
「さまざまな課題に直面しているが、革新的な治療手段となる遺伝子治療薬の開発には引き続き取り組んでいきたい」
8月頭に開かれた、アステラス製薬の決算説明会。菊岡稔CFO(最高財務責任者)は、臨床試験(治験)が差し止めとなった遺伝子治療薬「AT845」の状況を説明した後、そう強調した。
AT845は、「遅発型ポンペ病」という運動障害や呼吸不全が進行する遺伝性の病気を対象とした治療薬候補だ。被験者に重篤症状があると判断され、6月末にアメリカの食品医薬品局(FDA)から治験差し止めの指示を受けた。
菊岡CFOが「さまざまな課題」と表現したのは、同社ではAT845以外でも、ここ1年ほどの間に遺伝子治療薬候補の開発中止が相次いでいるからだ(アステラス製薬、安川健司CEOのインタビューはこちら)。
2022年4月には、筋ジストロフィー向けに開発していた遺伝子治療薬候補など3つの新薬の開発を中止した。2021年9月には「X連鎖性ミオチュブラーミオパチー」という難病を対象にした「AT132」についても、治験の差し止めを受けており、ほとんどの候補薬がペンディング状態となっている。
屋台骨の特許切れが5年後に迫る
これらの候補薬は、アステラスが2020年に子会社化した、アメリカのオーデンテス・セラピューティクス社の技術を用いて開発してきた。投資額は約3200億円と、同社にとって過去最大の買収案件だった。
アステラスが遺伝子治療の領域でここまでの賭けに出たのにはわけがある。
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