トヨタ自動車は31日、電気自動車(EV)の供給に向け、日本と米国で最大7300億円を投資すると発表した。2024-26年の車載用電池生産開始を目指す。
トヨタの発表資料によると、今回の投資により日米合計で最大40ギガワット時(GWh)の生産能力増強を目指す。日本ではパナソニックとの合弁会社プライムプラネットエナジー&ソリューションズの姫路工場とトヨタの工場・所有地に合計約4000億円、米国では豊田通商と共同で出資するノースカロライナ州の電池工場に約3250億円(約25億ドル)を投資する。
EVへの積極姿勢が際立つ欧米勢に対し、出遅れ感のあったトヨタは昨年12月にEVへの取り組みを加速させる方針を示した。EVの販売目標については大幅に引き上げ、30年に世界で年間350万台のEV販売を目指すとしていた。
SBI証券の遠藤功治アナリストは同EV販売目標を達成するためには今回発表された生産能力だけでは「全然足りない」と指摘。遠藤氏は「今の段階で350万台分の電池がどこから供給されると決まっているとは思えない」とし、協業する中国のCATLやBYDなどからの供給はこれから決まっていくとの見方を示した。
トヨタの前田昌彦チーフテクノロジーオフィサー(CTO)は昨年9月の会見で、電池のみで走行するEVの普及が予想以上に早い場合も検討しているとし、従来想定していた180GWhを超えて、200GWh以上の電池を準備することを想定していると話していた。
今回の発表でトヨタは、今後も協業先の企業からの調達を含め、各地域のEVの需要拡大に着実に対応するための電池の供給体制の構築に取り組んでいくとしている。
トヨタは昨年12月時点ではEVやハイブリッド車(HV)、燃料電池車(FCV)などの電動車の研究開発や設備投資のために30年までに約8兆円を投じるとしていた。そのうちEVに半分の4兆円を充て、車載用電池への投資も従来の1.5兆円から2兆円に増やすとしていた。
だが、実際の投資規模ははるかに大きくなる可能性があると遠藤アナリストは指摘する。ロシア・ウクライナ戦争の前と後ではリチウムを含めた鉱物資源価格が「根本的に違う。為替も全然違う。人件費や輸送費が相当上がってることもある」という。遠藤氏は、発表された投資金額では足りない可能性はあるものの、「トヨタだったらそこに1兆、2兆、3兆円増えても別に問題ではない」と語った。
トヨタ広報担当の本間英章氏によると、12月に発表した車載用電池への2兆円の投資は設備投資と研究開発で用地や建物などへの費用は含まれていなかった。それに対し、今回の7300億円には設備投資や土地・建屋への費用が含まれる一方、研究開発費が入っていないため比較は難しいという。
米国では今月16日にEV・HV購入の税額控除を盛り込んだインフレ抑制法が成立し、「クリーンカー」の新車購入者は引き続き1台当たり7500ドルの税控除が受けられることになった。ただし条件として、これらの車の原材料が米国と自由貿易協定を結んでいる国で抽出・処理される必要があるほか、電池の大部分の部品の製造ないし組み立てが北米で行われなければならない。
(アナリストのコメントなどを追加して更新します)
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著者:稲島剛史
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