浦和ルーテル学院小、「青山学院大学の系属校化」で人気上昇中の変化と不変 12年一貫のギフト教育で都心からも志願者増

ブックマーク

記事をマイページに保存
できます。
無料会員登録はこちら
はこちら

印刷ページの表示はログインが必要です。

無料会員登録はこちら

はこちら

縮小

例えば1年生と6年生がペアを組んで行う「1・6遠足」。下級生と接することで子どもと触れ合う楽しさに目覚めた6年生が、長じて小学校教諭や保育士になる例もあるという。この遠足でできた関係性が長く続くのも、12年一貫教育のなせる業だ。また、福島県の宿泊施設「山の上学校」で行われる宿泊学習では、スキーレッスンや食事作り、自然観察など、非日常の多様な経験ができる。スキーを究めてモーグルの選手になった卒業生もいるそうだ。

アメリカの姉妹校から生徒が来校する(左上)など、英語教育も手厚い。福島県の山の上学校(左下)。夏にはテントでのキャンプも行う(右下)
(写真提供:浦和ルーテル学院小)

福島氏は「近年、文部科学省が提唱している『探究』や『協働』も、本校では何十年もごく普通に取り組んできたことだと感じています」と言いながら、同校のギフト教育を次のように説明する。

「最も重要なのは、才能だけでなく人間性を育むことです。大人が『あなたの個性はこれだ』と示したり、やみくもに自分を信じろと言ったりすることは、必ずしも才能を伸ばすことではありません。他者が決めつけるのではなく、子ども自身が自分のよさに気づき、『もっとやれる』『ここまでか』など、自分で判断できるようにすることこそが教育です。そうでなければ、大人が一生子どものそばについていなければいけなくなってしまいますよね」

子どもに正解を示したがることも含め、近年の保護者には、答えをすぐに求める傾向があると感じている福島氏。子ども同士のトラブルでも、じっくり子どもに話を聞くより「それで結局、どちらが悪いのか」と結論を迫られることもあると語る。

「小学生の保護者はデジタルネイティブ世代になってきていて、スマホで検索するようにすぐに正解を求める方がいるように感じます。でも教育とは、『答えらしいもの』が出るのに時間がかかるものです。まして本校のギフト教育は一人ひとり異なる個性を重視し、個別最適化の教育を目指すものです。例えばサブスクサービスのように、出来合いのストックを求めに応じて即座に提供できるようなものではありません」

教育とは何か、浦和ルーテル学院の方針は何かを理解してもらうために、福島氏は説明会でも言葉を尽くしているという。

浦和ルーテル学院小中高等学校校長・福島宏政氏

「何十年も経ってから、小学校での学びが腑に落ちた」

福島氏にはとくに印象的な教え子がいる。6年生のクラスに、あるおとなしい男子児童がいた。彼は休み時間にも一人で本を読むなど寡黙なタイプで、周りのやんちゃな子どもたちには「ちょっと変わったヤツ」という扱いを受けていた。だが福島氏は、彼が小さい頃からバイオリンを続けていることを知っていた。福島氏がその児童に「みんなの前でバイオリンを弾いてみてくれないか」と頼むと、彼は快くその腕前を披露してくれた。いつもは目立たないクラスメートの新たな一面に教室は沸き立ち、子どもたちは彼を絶賛したそうだ。

次ページはこちら
関連記事
トピックボードAD
キャリア・教育の人気記事