浦和ルーテル学院小、「青山学院大学の系属校化」で人気上昇中の変化と不変 12年一貫のギフト教育で都心からも志願者増

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「そのとき、周りの子どもたちもびっくりしていたけれど、実はバイオリンを弾いた本人もとてもびっくりしていたそうです」

彼はプロのピアニストである母の厳しい指導を受けていたため、あまり褒められたことがなかったのだという。そのため自分の腕にも自信がなかった。

「ほかの子どもたちに『すごいよ!』と褒められて初めて、彼は自分自身のギフトに気づいたのだと思うのです」

やがて彼は東京藝術大学を経て、世界で最も優れると評される米国の音楽大学へ進んだ。現在は著名なオーケストラでプロとして演奏を続けているが、近年、その卒業生の言葉が、再び福島氏の心を打った。彼は聖書の「だれかがあなたの右の頬を打つなら、左の頬をも向けなさい」という言葉を挙げて、小学校時代の思い出をこう語った。

「その言葉を学んだとき、ありえない教えだと感じて理解できませんでした。でも大人になってみると、世の中には本当にいろいろな人がいて、攻撃的な態度で接してくる人もいる。そうした人と意見が衝突したときに相手と同じ攻撃的な態度をとってしまうと、周囲から同じレベルの人間と見なされてしまう。卒業して何十年も経ってから、聖書のあの一節のような姿勢でいられる人間性の重要さに気づき、あのときの学びが腑に落ちたのです」

海外では他者との衝突も日本の比ではなかっただろう。これは福島氏の「教育には時間がかかる」という言葉を裏付けるエピソードでもある。福島氏は笑顔で語る。

「キリスト教の教育が彼の中で生きていると感じられてうれしかったです。また、とくに芸術分野では、トップを目指すには海外に出ることが重要です。でもなかなかそれができる日本人がいないのは、経済的な問題もありますが言葉の壁が大きいと思います。その点、本校では小1から外国人教師による英語の授業があるので、そこも彼の未来を開く一因になったかと思います。国際教育が役に立ったのだなと、これもうれしい限りです」

青山学院大への進学をサポートするのはもちろん、芸術系や医学・薬学系など、同大学にない分野に進みたい生徒の指導も、これまでどおり注力していくという。

入試動向や学力水準の上昇も含め、福島氏は現状を「過渡期」と表現するが、その一方で「ギフト教育は変わりません」と断言する。浦和ルーテル学院小を目指す保護者に求められるのは、系属校化による変化と不変の教育方針の両面を注視し、わが子とのマッチングを見定めることだろう。

(文:鈴木絢子、注記のない写真:風間仁一郎撮影)

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