「ゲーム・オブ・スローンズ」新作に待ち構える試練 「ハウス・オブ・ザ・ドラゴン」の配信に紆余曲折

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マーティンと以前から親しくしてきたライターのライアン・J・コンダルは、マーティンが書いた『Fire & Blood』を下敷きに、キャラクターやストーリーを大きく膨らませ、『ハウス・オブ・ザ・ドラゴン』の物語を作り上げる。そこへ、オリジナルの監督を務めたひとりであるミゲル・サポチニクがコンダルとともに現場責任者を務めることになり、良い感触を得たHBOは、試しに第1話を作らせるというステップを踏まずして、彼らに製作を発注したのである。

コンダルとサポチニクによれば、第1シーズンでは20年間に起こる話が語られるとのこと。その先の展開も、もちろん考えている。「僕らには、始まり、真ん中、終わりのビジョンがある。この第1シーズンが視聴者に受け入れられて、続きを作ることができるようになることを願っている」と、サポチニクは筆者とのインタビューで語っている。

採算性に厳しい視線も?

だが、そのハードルは、彼らがこのシリーズを作り始めた頃よりも、さらに高くなってしまったかもしれない。今作が作られている間に、HBOを抱えるワーナー・メディアはディスカバリーと合併し、ワーナー・ブラザース・ディスカバリーという新会社になったのだが、そのトップに就任したデビッド・ザスラフが、かなりお金にシビアなのだ。

ディスカバリーからやってきたザスラフは、30億ドルのコスト削減をうたっており、つい最近もHBOとHBO Maxのスタッフをレイオフしたばかり。9000万ドルをかけて製作され、完成が近づいていたHBO Max用の映画『バットガール』のお蔵入りを決めたのも彼だった。劇場で上映するには物足りなく、配信用にしてはお金がかかりすぎで、個人的には出来にも満足できないこの映画を、損失として計上することで節税に使ったのではないかと臆測される。

「配信用の作品に多額のお金を投入するのは意味をなさない」と述べるザスラフは、HBO Max用のコンテンツ製作に力を入れ、パンデミックだったとはいえ2021年の劇場公開映画をすべてHBO Maxで同時配信した前任者ジェイソン・カイラーとは対極。今後は最初からHBO Maxでの配信を目的に、劇場用級の映画が作られることはないと思われる。

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