日本が貧しくなった原因を「デフレ」としたのは、そもそも誤診だった。
過去30年、グローバリゼーションやICT革命で、日本ではメンバーシップ型雇用が減り、非正規雇用との二極化が進んだ。働き方や家族形態の変容に社会保障制度が対応できず、消費が低迷し、少子化にもつながった。
10年前、多くの人は「2000年代に貧しくなった元凶はデフレ」と判断し、アベノミクスが採用された。そうした政策で私たちは豊かになったのか。
時間当たり実質賃金を見ると、1980年代は年率1.8%、1990年代は1.1%上昇したが、2000年代は0.2%下落し、確かに貧しくなった。そして2010年代は0.3%とわずかに上昇した(上図)。
生産性上昇率は低下した
時間当たり実質賃金の変化率は、①時間当たり労働生産性上昇率、②労働分配率の変化率、③交易条件の変化率、の3つに分解できる。このうち、実質賃金の引き上げに不可欠な生産性上昇率は、1980年代は年率2.8%だったが、1990年代は1.8%、2000年代は0.8%、10年代は0.3%と低迷した。
アベノミクスには「3本の矢」があったが、1本目と2本目の金融政策・財政政策頼みで、3本目の成長戦略は進まなかったと考える人が多い。ただ、反成長戦略が取られたわけでもない。なぜ生産性上昇率は低迷を続けたのか。
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