東急不、「渋谷で絶対的」を活かした新戦略の狙い 西川社長「他のデベロッパーが来ても焦らない」

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「他社の渋谷参入はウェルカム」と語る西川弘典社長(撮影:尾形文繁)
100年に1度とも言われる大規模再開発が進む東京・渋谷。その主役の1人が不動産大手の東急不動産ホールディングス(HD)だ。「広域渋谷圏」を打ち出し開発事業を推進、今後は渋谷駅南口側の桜丘地区の再開発などが控えている。
だが、異変も起きている。今年1月には道玄坂沿いの計7棟のビルを建て替える再開発に、三菱地所が参画。その後もヒューリックや東京建物など、おひざ元の渋谷に「非東急」が次々と参入しているのだ。
そんな中で同社は今年5月、新しい中期計画を発表した。2025年度営業利益1200億円、ROE(自己資本利益率)9%を目指す(2021年度は営業利益838億円、ROE5.7%)。計画通りの利益拡大は可能なのか。新たな戦略とその狙いを西川弘典社長に聞いた。

ーー2022年以降に発表された渋谷の開発案件は、ヒューリックや東京建物など、非東急のデベロッパーが再開発事業者に選ばれています。東急グループは負け続きですが、想定通りに渋谷エリアを開発できますか?

他のデベロッパーの渋谷参入はウェルカム。国内の大手デベロッパーがそろい踏みする再開発エリアは、渋谷以外にないのではないか。それだけ渋谷が魅力的ということだ。これは負け惜しみではない。それぞれが競い合うことで渋谷エリア全体の集客力が高まる。

2020年に三井不動産が渋谷区の公園を再開発した「ミヤシタパーク」は、渋谷の雑多さを表現していて「うまく作ったな」と感じた。渋谷の人の流れも変わった。ただ、おかげでキャットストリートを通じて原宿への人流ができ、渋谷から東急プラザ表参道原宿への回遊性が高まっている。

他社の侵食に焦らなくていい

「やられた」と思うことがあっていいと思っている。渋谷という街は広くて、多種多様な文化を持った施設がある。いろいろなデベロッパーが開発して雑多さが生まれることで、本当の渋谷の再開発になるのではないか。

焦る必要などない。「ネクスト渋⾕桜丘地区」の開発が控え、渋谷駅の南口側はほとんど「東急色」になる。渋谷の中心部を押さえているのは絶対的に強い。勝ち負けというレベルにはなく、われわれが渋谷の再開発から外されるということは絶対にない。

ーー渋谷の魅力を一言で言うと?

渋谷には働く・住む・楽しむという3つの機能がすべてそろっている。24時間多様な集客装置が動いていて、いろいろな文化を持った施設ができあがっている。まさに渋谷が持つ雑多さによるものだろう。

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