小中高生が「先端デジタル機器」で自由に表現活動できる無料施設の正体 「コンピュータクラブハウス」で格差是正へ

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コンピュータクラブハウスの取り組みが始まって4年目。末廣氏は現在、担当責任者として定期的に3拠点を回っているが、そこでさまざまな子どもたちの成長を目の当たりにしているという。例えば、小学5年生からJavaというプログラミング言語を独学で学び、この施設に来て勉強しながら今年中学3年生になった子は、地元IT企業でアプリ開発のサポートをするようになった。

「読み書きに困難があるディスレクシアの子が音楽制作で才能を発揮するようになったり、コミュニケーションをうまく取れなかった子がスタッフのために3Dプリンターで作品を作ってくれたり、当初より明るくなった不登校傾向の子もいます。3拠点は、子どもの個性をいろんな視点で面白がってくれる大人がいる場。デジタルスキルが伸びるというのも大事な変化ですが、自分で作ったものを認めてもらえるサイクルを通じて、自らアイデアを提案する自信がついたことが大きな成長ではないかと思います」

居場所と学びの両立を追求し、さまざまな形態で普及目指す

現在、金沢市のミミミラボでは、登録者は350人強、延べ1700人超の子どもたちが利用している。金沢市より人口の少ない加賀市のコンピュータクラブハウス加賀でも年間1400人ほどの子どもたちが利用しており、全体として拡大傾向にある。

「現状では中高生は放課後の部活動などがあり、比率的には小学生の利用者が多く、『テクノ学童』と呼ぶ人もいます。金沢市では男女比率が6:4であるのに対し、加賀市では施設の名称にコンピュータという言葉がついていて女子がとっつきにくいのか、男子の比率が高い。一方、高知県須崎市では地域の特性があるのか、女子の比率が高くなっています。いずれにせよ、デジタル・テクノロジー分野におけるジェンダーギャップの解消に努めていくことも私たちの果たすべき役割だと考えています」

今後は外部とのつながりも強化していく。例えば、第1号の「コンピュータクラブハウス加賀」は、米国のクラブハウスネットワークにも加盟しており、コロナ禍で中止となっていた年次総会や各国の子どもたちを集めたハッカソンなどにも参加し、世界との交流も進めていく方針だ。Minecraftカップへの出場など、施設内でチームをつくって参加するような取り組みも行い、「ゆくゆくはeスポーツなどにもチャレンジしていけるといいなと思っています」と、末廣氏は話す。

また、加賀市の中学校ではコンピュータクラブハウスでの活動が部活動として認められるようになったほか、学校と教育委員会と一緒にSTEAM教育のイベントを行う予定など、教育現場との連携も出てきている。

「コンピュータクラブハウスの取り組みは始まったばかりなので、引き続き子どもたちの居場所と学びの両立について問い続けたいと思います。また、児童館の活動をアップデートする形や、博物館の一角に入れる形、みんなのコード直営ではなく現地のNPOが運営する形など、さまざまな運営スタイルを模索し、施設の普及を進めたいと考えています」

(文:國貞文隆、写真:みんなのコード提供)

東洋経済education × ICT編集部

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