小中高生が「先端デジタル機器」で自由に表現活動できる無料施設の正体 「コンピュータクラブハウス」で格差是正へ
これまで国内での実績はなかったが、みんなのコードが初めて日本に導入し、現在3拠点を運営している。プログラミング教育支援でつながりのあった加賀市と共に19年5月から始めた「コンピュータクラブハウス加賀」(石川県加賀市)が日本第1号だ。

そして、同様の取り組みを始めたいという地元企業の三谷産業から施設と資金の提供を受け、21年7月から金沢市でも「ミミミラボ」をスタート。その後、日本財団などから資金提供を受ける形で、22年3月からは高知県須崎市でも「てくテックすさき」をオープンした。
「私たちはコンピュータクラブハウスのような施設を最終的には全国で2000カ所はつくりたいと考えています。デジタルを活用して表現する権利をすべての子どもたちに保障するためにも、将来的には公立図書館のような生活のインフラとして整えていきたいと思っているのです」
デジタルの「消費者」ではなく「表現者」を育てたい
各施設とも、10~18歳で登録を済ませれば、基本的には市内外在住を問わず誰でも無料で利用できるというが、子どもたちはコンピュータクラブハウスで具体的にどんな活動をしているのだろうか。
現状、3つの施設はいずれも200平方メートルほどの広さで、パソコンやタブレットのほか、ドローン、3Dプリンター、VR、レーザー加工機など多種多様な機材を備えており、プログラミングをはじめ動画制作、音楽制作、グラフィック制作などができるソフトウェアも充実している。

プログラミング教育やSTEAM教育というのは、機材をそろえるだけで多額のお金がかかってしまう領域だ。だから、学校や家庭でそろえられない機材を用意し、この場所に来たすべての子どもたちがプログラミングに限らず、動画制作、音楽制作などデジタルによる表現活動を自由に行えるようにしているのだという。
「最近では貧困家庭ほど、子どもが1人でも時間を潰せるようにと親がゲーム機を与える傾向があります。しかしそれでは、子どもたちは単なるデジタル消費者になりかねません。デジタルの力が子どもたちの将来を左右するようになった今、私たちはデジタルを使って自分のアイデアを表現できるような子どもたちを育てたいと考えています」
各施設とも週に20時間ほど開館しており、基本的に利用時間は放課後からだが、不登校の子どもたちも利用できるよう施設によっては午後1時から開けている。
運営は常駐のスタッフと、メンターという形で映像編集やプログラミングなど専門性を持った地域の社会人、あるいは大学生などが毎日2人ほど入って子どもたちの活動をサポート。子どもたちがどんなデジタル機材を使って、何を作るか、何を学ぶかは自由だが、やりたいことがわからない子には、スタッフやメンターが会話から興味・関心を探るなど活動のコーディネートも行っている。
「私たちの施設は、学校外の同世代や日常生活でなかなか会えないような大人たちに会うことができ、自然にコミュニケーションが発生する点もいいところだなと。とくに地方では子どもたちがエンジニアやデザイナーになろうと思っても、身近にロールモデルがおらず、親や学校の先生がどう機会提供して導いてあげればよいかわからないケースも多いのですが、施設ではデザイナーを目指す高校生と地域の現役のデザイナーがこたつで気軽におしゃべりしながら将来のことについて語り合う場面なども見られます」
