「第2青函トンネル」は北海道の物流を救うのか 鉄道部分は課題山積も「貨物列車の本数は確保」

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青函トンネルに並行して「第2青函トンネル」を建設しようとする機運が高まっている。実現すれば、北海道と本州を結ぶ物流網の強化やコスト削減につながる。

北海道側から見た第2青函トンネルのイメージ。アクセス道路、接続在来線の建設は国の直轄事業という前提だ(提供:日本プロジェクト産業協議会)

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輸入食料の価格高騰を背景に、食料基地である北海道と本州を結ぶ物流網強化に関心が集まっている。核となるのが、現在の青函トンネルに並行して建設する「第2青函トンネル」構想だ。

構想は、大手ゼネコンやデベロッパー、総合商社などで構成し、政策提言を行う日本プロジェクト産業協議会(JAPIC)がまとめたものだ。2017年に「青函マルチトンネル構想」として公表し、その後、地元の経済団体と内容を磨いて2020年11月に「津軽海峡トンネルプロジェクト」として発表した。

第2青函トンネルは2層構造の構想

JAPIC案では、直径15m、長さ31kmの円形のトンネル内は上部トンネルと下部トンネルの2層に分かれ、上部に片側1車線の自動運転の専用道路(自動運転未対応車はトラックをパレット台車に載せて運搬)、下部には避難通路兼緊急車両用の通路と、単線の在来線貨物鉄道が通る。

JAPICの構想ではトンネルは2層構造。上部に自動運転の専用通路、下部に緊急車両や貨物鉄道などが通る(提供:日本プロジェクト産業協議会)

工事にはシールド工法を採用し、断面を小さく、総延長も短くすることでコストを削減した。密閉型・高強度コンクリートを使用し、現在の青函トンネルに必要な大規模改修も不要になる。

「食料やエネルギー価格が高騰しているが、食料自給率、エネルギー自給率が低い日本は海外動向に左右されやすい。国産国消(全国版の地産地消)の拡大が必要で、そのためには北海道の食料、再生エネルギーの活用が絶対条件だ。津軽海峡トンネルプロジェクトはこの課題に資することになる」

JAPICで構想をとりまとめている戸田建設の神尾哲也常務は、5月に函館で開かれたシンポジウムで力を込めた。構想の発表から5年が経つが、日本の農業生産額の14%(2020年)を占め、風力発電の有力な適地として見込まれる北海道を再評価する機運が高まっている。

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