JR各社は赤字ローカル線存廃論を進める。一方、新幹線延伸でJRから分離する並行在来線の存廃も熱を帯びる。鉄道貨物の大動脈、北海道の函館ー長万部間を廃線すれば、貨物列車は道内から消滅。影響は全国に及ぶ。
鉄道利用の減少で、JR各社は赤字ローカル線廃線の方針を打ち出している。コロナ禍を経て、鉄道で満員電車に揺られて通勤するスタイルに変化が訪れ、出張も激減したことが背景にある。もはや黒字路線で赤字ローカル線を維持する「内部補助」は限界を迎えている。
赤字ローカル線の廃線を最初に打ち出したのは、JR北海道だった。コロナ禍に先立つ2016年11月、道内の営業路線のおよそ半分、10路線13線区を「JR単独では維持困難」と発表し、そのうち5線区5区間で廃線の方針を掲げた。
JR各社が赤字ローカル線を続々と廃線に
実際、2019年4月に石勝線夕張支線が、翌2020年4月には札沼線の大半が、そして2021年4月には日高線の大半が廃線となった。さらに根室線の一部や留萌線も廃線となる方向だ。
JR九州も2017年から営業路線の輸送密度(1㌔あたりの1日平均利用者数)を公表し、2020年度は19区間で輸送密度が2000人を下回り、同区間の営業赤字は66億円にのぼることを明らかにしている。
JR西日本も今年、コロナ前の19年度の輸送密度が2000人未満だった17路線30区間を公表。JR東日本も早ければ7月にも不採算路線を公表する方針だ。
「輸送密度2000人未満」は、国鉄改革で「第1次特定地方交通線」とされ、真っ先に廃線、バス転換となった路線だ。あるJR東日本の関係者は、「当社が抱えている路線の赤字の規模はJR北海道の比ではない。首都圏の通勤電車の収入でなんとか賄っているが、それも限界にきている」と明かす。
国土交通省は2022年2月からローカル線のあり方をめぐる有識者会議を立ち上げ、これまでに柔軟な運賃見直しや、鉄道会社は列車の運行(上)のみを行い、自治体が線路(下)を維持管理する「上下分離方式」などが提言されている。
いずれにせよ、今後、JR北海道が経験してきた廃線の可否をめぐる地元との激しい論争が、全国各地で湧き起こることになる。
一方、北海道のある線区で、別の枠組みで鉄路の存廃をめぐる論争が起きている。北海道新幹線の札幌延伸でJRから経営分離される並行在来線をめぐる問題だ。
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