株式上場を検討しているJR貨物。上場に際して、最大のネックになるのがJR東日本などに支払う線路使用料だ。JR貨物はどのような負担が適正だと考えているのだろうか。

JR貨物の経営陣の中で、田村修二会長は唯一の旧国鉄出身者だ(撮影:大澤誠)
日本貨物鉄道(JR貨物)の上場に当たって最大のネックになるのが、JR東日本など旅客会社に支払う線路使用料だ。
JR貨物は1980年代の国鉄改革以来、約30年にわたり、旅客各社が保有する線路を格安で使用するスキーム、いわゆる「アボイダブルコスト(回避可能費用)ルール」を採用している。
同ルールはもともと、経営基盤の脆弱なJR貨物の「生命維持装置」として導入され、JR旅客各社の保有する線路を貨物列車が走行する際、固定費などは負担せず、修繕費の一部のみを列車本数などによってJR貨物が負担するというもの。固定費を含めたフルコストの3分の1程度の負担で済んでいると言われている。
この線路使用料をめぐる問題は2027年に大きな節目を迎える。JR貨物が旅客各社と結んでいる20年間の線路使用協定が更新期限を迎えるからだ。少子高齢化でJR旅客会社の経営に不透明感が増す中、協定がすんなり更新されるかどうかは微妙だ。
前回(2007年)の協定更新にも深く関わったJR貨物の田村修二会長に、線路使用料に関する同社の基本スタンスを聞いた。
「貨物は従」でないと存立の基盤を失う
――コロナ禍を経て、JR旅客各社は厳しい業績を強いられました。旅客会社の関係者の間では、JR貨物の線路使用料に対して見直しを求める声が根強いです。
(線路使用料の費用負担ルールは)基本のインフラに関する費用はJR旅客が負担して、貨物列車の走行によって追加的に生じる修繕費を貨物会社が支払うということだ。
アボイダブルコストルール(アボルール)は、JR旅客各社からJR貨物への内部補助に近いという人がいるかもしれない。しかし、学説と欧米の実例を踏まえて、国鉄改革で各社の経営が成り立つように(インフラのコスト負担に関する)制度をつくったことを忘れてはならない。
現在の日本においては、(レールを使った)主たる生産物は旅客列車であり、貨物列車は従。この考え方が底流にないと、われわれ貨物会社は存立の基盤を失うことになる。
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