31歳・埼玉の公立高校教諭は、米コロンビア教育大学院留学で何を学んだか? 先生にこそ「海外留学」勧める、納得の理由

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米国の教育のよいところは、視野が広がることだという。大学院の学生は学校関係者からNPO、教育関連企業の出身者など、さまざま。田原さんは教育イノベーターを育成するコースを専攻。通常の授業のほか、実習として地元の学校のコンサルティングを行うなど理論と実践を並行しつつ、世界各国からやってきた学生たちと深い議論をすることで、さまざまな国の教育観を知り、広い視野と思考の幅を持つことができた。

「米国の教育はリーダーや研究者といった天才を伸ばす力はすごいものがあります。ただ、そう感じる一方で、外に出てみたからこそ日本の公教育のよさも改めて実感しました。日本の教育はやはり基礎的な学力が強く、皆が読み書きや計算もできるし、教育環境のスタンダードが高い。しかし、米国では、必ずしもそうではありません。ものすごくよい教育環境がある一方で、そうではない教育環境もある。その違いが明確に見えたことは勉強になりました」

留学して得たものは「チャレンジする姿勢」だ。年齢に関係なくチャレンジすること、学生だけではなく、教員が起業したり、NPOを立ち上げたり、新しいことにチャレンジすること。そうしたチャレンジを奨励し、応援する雰囲気がアメリカにはあるという。

「年齢を聞かれ、自分は30歳だと言うと、多くの人たちが、まだ若いから何でもチャレンジできるじゃないかと言います。日本の場合、教員をしていて持ち家があって子どもいますというと、もう人生は決まったように判断されてしまう。年齢に関係なく、いつでもチャレンジできるというマインドを得たことは、本当に大きな成果だと思っています」

田原さんは留学中、「Gakkatsu(がっかつ)」という日本人を集めた勉強会も開催した。

オンラインとリアル、Gakkatsuでの勉強会の様子。

「コロンビア大学教育大学院で学んでいるとき、日本人同士のつながりが薄いと感じていました。日本から留学して、法律や政策、ビジネスを学んでいる人は帰国するとリーダー的な立場になる人が多い。そうした人たちとのつながりこそ、また留学の資産です。将来、何らかのかたちでよいコラボレーションが生まれるかもしれない。そう思い、留学生が交流できる会を立ち上げました。当初は、ロールモデルになるような人を呼んで、ディスカッションして、ピザを食べながら親交を深めるといった活動をしていたのですが、その後学生団体を立ち上げることになり、今年の9月から第2期として継続される予定です」

「偏差値」だけで評価されない世界

コロンビア大学教育大学院で、さまざまなことを学んだ田原さんだが、改めて日本の教育をどのように変えていきたいと考えているのだろうか。

「国際的に通用する生徒を育てたいと考えています。そのためには、目標や方向性をきちんと定めて、生徒に必要な力をつけることが重要です。実はもうひとつ見落としがちなのが、教員や保護者のマインドセットといえます。教員や保護者が、はからずも進学の邪魔をしてしまうことがあるのです。海外に通用する若者を育成するには、生徒に『世界に出なさい』というだけではだめで、教員や保護者にも、海外に進学する意味を考えてもらう必要があります」

田原さんは今、生徒や教員に「海外進学のススメ」を説いている。

田原佑介(たはら・ゆうすけ)
1990年生まれ。2児の父。山口県出身。埼玉県の公立高校で8年間勤務。経済産業省「未来の教室」実証事業の「Hero Makers」に参加。その後留学経験ゼロで、海外大学院への進学を志し、米国の大学院を受験。2021年秋より、フルブライト奨学金など3つの奨学金を受け、コロンビア大学教育大学院に留学。2022年夏修了。現在、教育ベンチャーLOOPALを起業、自身のTwitterでも情報発信をしている

「偏差値ベースで、進学や将来のキャリアがほぼ決まってしまい、偏差値レースに上手に乗れなければ、逆転するのが難しい。そんな日本の現状は、どうしてもおかしいと感じるのです。偏差値だけで評価される世界とは違う世界があってもいい、そう思いませんか。日本を一歩出てみれば、その世界は存在します。海外に進学し世界を見ることで、自分が評価されるフィールドがひとつではないことがわかるのです。日本だけではなく、世界中の企業で働くことができ、世界中どこにでも住めることを知ります。自分の世界が、その分広がるのです」

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