日野田直彦校長、千代田国際中で「海外大学への直接進学」視野に新たな挑戦 教育には「偉大な勘違い」が欠かせないワケ

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千代田国際中学校(東京・千代田区)は、2022年春に1期生が入学した注目の新設校だ。前身は18年に募集を停止した千代田女学園中学校。今でこそ、男女別学のメリットも再認識され始めているが、当時の共学人気や少子化など時代の波に押され、紆余曲折を経て現在の形でのリスタートに至った。初年度となる入学試験では学校の予想を超える数の生徒を集め、保護者からの期待の高さが浮き彫りに。その人気の大部分を担う校長の日野田直彦氏に、同校で実現したい学びのあり方を語ってもらった。

目指すのは「一条校とインターナショナルスクールの間」

2022年度に第1期生となる生徒を迎えた千代田国際中学校。同校の校長でもあり、系列の武蔵野大学附属千代田高等学院、武蔵野大学中学校・高等学校の学園長も務める日野田直彦氏は実にざっくばらんだ。

「学校説明会では、『うちは一度倒産した会社のようなものです』と話し、現在の経営状況なども包み隠さず伝えています」

それでも同校への期待や関心は非常に高く、22年度は全5回の入学試験に336人の志願者が集まった。さらに合格者のうち半数を超える74人が実際に入学。初年度からこれだけの結果が出たことには、やはり日野田氏の存在が大きく影響しているだろう。同氏は「私はそんなに前に出たくないんですよ、とにかく主役は生徒ですから」と笑うが、14年に大阪府立箕面高等学校に全国の公立高校で最年少の校長として就任し、海外大学への直接進学で前例のない実績を残す革命児だ。

「箕面高校のときも、私は英語を勉強しろとか海外の大学に行けとか、そんなことは言っていません。ただ日本が今どんな状況にあるかという事実を淡々と説明し、選択肢の1つとして海外の情報を示しただけです。あとは生徒自身が興味を持てば、それを手助けすることには全力を尽くしました」

東京都心の一等地に位置する千代田国際中。周辺には雙葉や女子学院などの名門もある

できたばかりの学校にわが子を預ける決断をした、1期生の保護者たち。具体的にはどんな家庭の子どもが集まっているのだろうか。

「今の保護者は、ちょうど就職氷河期を経験した世代が多くなっています。東大を出ても企業に入れなかったような時代を経て、偏差値教育に限界を感じるようになった方も増えているのだと思います。とくにお父さんが本校を気に入ってくれたご家庭が多いようで、説明会でも父親参加率が非常に高いことが特徴的でした。私の経歴をご存じの方が、ちょっとしたコンサルやセミナー感覚で来てくれたようです(笑)」

目指しているのは、一条校とインターナショナルスクールの中間のような、自由さとケアの程よいバランスだ。現在の1年生が中学を卒業するタイミングで、接続する高校もリニューアルする予定だという。

守破離、中庸、関係の質……日本人のよさに気づいて

千代田国際中の理念には日本的な点も多い。日野田氏は「基本の礼節は大切です」と語り、学びの過程を示す思想として、武道や茶道で言われる「守破離」を掲げている。これは同校の教育方針であるPBL(Project Based Learning)にも通じるもので、「学んだ知識を使ってみて、うまくいかなければまた学び、応用する。この繰り返しはリカレント教育にもつながります」と説明する。

また自身の経験から「日本人の強さは中庸にある」とも考えている。海外では、異なる背景を持つ人たちが共に過ごす中で、軋轢も生まれやすい。そんなとき、間に入って両者を調整することができる日本人の能力は、これからの社会でますます求められるものだと話す。

「私も海外では『まあまあ』という感じで、よく争いを仲裁していました。この役割を担っているのはたいてい日本人かトルコ人か、あとはアハハと陽気に流すブラジル人でしたね(笑)」

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