GIGAスクール「ICT化の波」乗れない先生の処方箋 よくあるトラブルや失敗をカンタン解決に導く

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GIGAスクール構想による「1人1台端末」の活用がスタートして半年が経過し、授業での端末活用に学校間、教員間のギャップが出始めている。「ICT化の波に乗れなかった先生は今がチャンス。いや、ラストチャンスなんです」。こう話す愛光中学・高等学校の松下直樹氏は2021年8月、学校でよくある突然のトラブルをまとめた『学校ICTサポートブック』を仲間とともに出版した。ICTに詳しい先生には物足りないかもしれないが、ICTに疲れている先生、失敗して挫折しかけている先生、これから端末を活用した授業に取り組もうという先生にお勧めで、現役のICT支援員も太鼓判を押す一冊だという。

授業は「チョーク&トークで十分」を変えた出来事

学校の中にICT に精通している先生は、はたしてどのくらいいるだろうか。学校にもよるが、多くは少数派に違いない。だが、パソコンや周辺機器に詳しくても授業に活用できていない先生はいるし、そこまで詳しくなくても授業でうまく使えている先生もいる。

「大切なのは、授業に取り入れるビジョンや目的が確立されているか」と話すのは、愛媛県松山市にある私立の中高一貫校、愛光中学・高等学校の松下直樹氏だ。

これまで日本の学校教育におけるICTの活用は、必要性を問われながらもなかなか進んでこなかった。そこには、「チョーク&トーク」といった先生たちの授業に対する自信やプライドがあり、ICTは必要ないという考えが少なからずあったという声を多く聞く。

松下直樹(まつした・なおき)
愛光中学・高等学校 教諭
(写真:松下氏提供)

松下氏も「5年前、つまり今の学校に赴任するまでは自分の授業は、チョーク&トークで十分だと思っていて、教え方にはある程度の自信を持っていました。ICT教育って、必要なの?という気持ちだったと思います」と打ち明ける。こうした態度だった松下氏が変わったのは愛光中学・高等学校に赴任後、約1カ月が過ぎたゴールデンウィーク明けだった。

「僕の授業中に居眠りをする生徒が十数人現れました。考えてみれば、当然ですよね。俺の話を聞け! みたいな感じで自分の授業に酔っていて、恥ずかしながら生徒を主語にした学びをまったく実践できていなかったのですから」

授業が成立しない中で、何か工夫をしなければいけないと思い、まずは自分を主語にした授業はやめようと決意したという。そして、生徒たちを主語にして、彼らのために自分は何ができるのかを考えた。アクティブラーニングやICTを授業で活用するための勉強を始めたのも、そこからだった。

「ICTは教えるために必要だ、という観点で見ると切り捨ててしまう方もいますが、生徒の学びにとって必須と考えることが何より重要です」。こう話す松下氏は、いろいろな教員とぶつかりつつも対話をしながら学校内でICTの活用を働きかけてきたという。たとえICTを取り入れなくても、生徒のためにすばらしい授業をしている先生はたくさんいるが、子どもたちがこれからの社会を生きていくためにICTは必須と考えているからだ。

「時代はティーチングではなくてラーニングなんです。ICTは文具と同じであって、先生が教えるための教具ではないという発想の転換が求められているのではないでしょうか」

今が誰かに質問できるラストチャンス

ただ、新型コロナウイルスの感染拡大によるICTへの注目の高まり、GIGAスクール構想の前倒しなどで、もはや「使う前から使わないと言う人は減ってきている」と松下氏は話す。当然、今もGIGAスクールに否定的な意見を持つ先生も少なくないが、学校教育におけるICTの活用は待ったなしの状況だ。

「これまでICT化の波に乗れなかった先生は今がチャンス。いや、ラストチャンスなんです。GIGAスクール構想が始まったばかりだから、わからないことがあればいろいろ聞けるし、わからなかったことがわかった瞬間の喜びを共有することもできます。初歩的な失敗だって、今ならまだ笑い飛ばせる段階です。ですが、これが数年もすると『えっ、今さら?』って思われてしまいます」

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