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コロナPCR検査有料化で高まる中国市民の不満 実際は強制なのに、個人負担させられる不合理

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中央は費用を負担しないことを表明。財源不足の地方政府が個人負担にしたことで混乱が生じている。

中国ではあらゆる場所で陰性証明を求められる。上海市内のマンション前で、PCR検査の検体を採っている様子(写真:AFP/アフロ)

「ゼロコロナ(清零)」政策によって定期的なPCR検査が不可欠になっている中国で、その費用を誰が負担するのかが大きな問題になっている。中央政府が負担を否定したことで、地方政府の中には検査を有料とする例も出てきた。予算不足で検査の間隔や回数の規定を緩める動きもあり、ゼロコロナ政策の根幹を揺るがしかねない事態に陥っている。

オミクロン株の拡散後、ゼロコロナ政策の切り札として実施されたのがPCR検査の常態化(中国語で「常態化核酸検査」)である。公共交通機関やオフィスビル、ショッピングモール、政府施設、学校などを利用する際に、一定期間内のPCR検査での陰性証明を求められる。地域単位の封鎖は社会や経済への影響が大きすぎるため、それに代わる手法として、PCR検査により感染者を早期に発見し、行動を制約する発想だ。

費用負担をめぐる国民の混乱

現実的な方針転換だが、問題はその費用負担だ。これまで中国では国民の検査費用について表立っての議論は少なかった。「中央政府の負担」との暗黙の認識があったからである。具体的には、国務院(内閣)直属の国家医療保障局管轄の医療保険(日本の健康保険に相当)から支出されるとみられていた。中国の医療保険は勤労者の場合、前年度賃金総額の8%を雇用者が、2%を被雇用者(個人)が納付する仕組みで、2021年末時点で3兆6000億元(約72兆円)がプールされている。

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