「マザウェイズ」絶好調に見えたのに破産した理由 女児服の人気ブランドはどこで目算が狂ったのか
だが、値上げによって客離れが進み、プロパー消化率は65%まで下落。しかも、サイズ展開がこれまでの倍に当たる10種類にもなっうえ上、新たなユーザーも取り切れずに店舗の在庫は増え続けた。
少しでも在庫をさばこうと、2カ月ごとだったセールを毎月実施するようにしたため、「いつでもセールをしている」とのイメージを客に与えた。「定価で買わない客」 が増え、シーズンごとに投入した新作でもすぐに値引きをしないと売れない悪循環に陥った。さらにこの時期、百貨店の子供服ブランドのセカンドラインなどが、マザウェイズの主戦場であるショッピングモールに次々と進出。「価格」と「商品力」の両面で競合との差を打ち出せなくなり、固定ファンを減らす状況も生まれた。
2017年1月期には売上高84億円と過去最高を記録した。しかし、商品の大幅な値引きが常態化しており、純利益率が1%にも満たない薄利の経営になっていた。
「2019年1月期の純利益1267万円から計算すると、1店舗当たりの純利益は年間約12万9200円。売上原価から推計すると在庫は約9カ月分あった。ここ数年は、過剰在庫で財務的にかなり苦しんでいたと考えられる」(帝国データバンク大阪支店)。
慢性的な在庫を抱えるところに天候不順が追い打ちをかけた。2018年秋から冬にかけて続いた暖冬、 19年の春先に続いた寒波の影響により在庫がさらに増加。 2019年4月には短期借入金の返済ができなくなり、資金繰りも行き詰まったことで経営を断念した。
なぜ拡大路線を捨てられなかったか
破産を未然に防ぐ方法はなかったのか。松本社長は、「拡大策でしのぎ続ける方法しか思いつかなかった」と振り返る。「店舗を閉鎖し、事業縮小やリストラを進める対策も考えたが、金融機関から『業績停滞』だと警戒されたら資金調達が困難になると見て踏み切れなかった。ここ数年、 20億円前後の在庫を常に抱えていた」という。
マザウェイズのような拡大志向がもたらす行き詰まりは、実は「アパレル企業に共通の課題」と指摘するのは、事業再生に詳しい経営コンサルタントだ。アパレル市場の主力はトレンド重視の商品から、丈夫で長持ちする実用品に移ってきた。そこにネットを使って各社を比べ、無駄なものは買わない人が増えた。
これに対して「メーカーは、数を売る習慣が染みついていて、自社の実力を過信して商品を作り過ぎる。安易に生産を増やさず、厳しく商品管理しないと、大量の在庫を抱えてすぐに破綻しかねない」。
大きな時代の変化を、マザウェイズは読み切れなかった――。次回は、経営破綻から2年後、再び取材に応じてくれた松本社長の独白をお伝えする。拡大路線を捨てられなかった理由を元経営者が振り返る。
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