公立高進学の新たな選択肢「地域みらい留学」で見えてきた興味深い変化 多様性高まり、受け入れる高校や地域も活性化

「エリア×偏差値」ではなく「自分軸」で学ぶ場を選べる
どの高校を受験するのか。その決断は、自宅から通えるエリアと、合格が期待できる偏差値との組み合わせで下されることが多い。この縛りを解き、北海道から沖縄まで多様な地域の高校から「自分軸」で学ぶ場を選ぶという新しい選択肢を提供するのが、地域・教育魅力化プラットフォームの「地域みらい留学」だ。
具体的には、2つの選択肢がある。高校3年間を丸々過ごす「地域みらい留学」と、高校2年時に単年留学する「地域みらい留学365」だ。生徒たちを受け入れる地域・公立高校は、初年度の2018年度は13道県34校だったが、22年度には32道県90校にまで拡大した。また、説明会参加者数は18年開催時が1173人だったのに対し、21年は4024人と増加の一途をたどっている。
岩本氏は「地域みらい留学生は、21年度で約500人。確実に認知が広がってきており、不可逆の流れになりつつあるのではないかという手応えを感じています」と話す。

一般財団法人地域・教育魅力化プラットフォーム代表理事、島根県教育魅力化特命官 大学卒業後にソニーで人材育成・組織開発・社会貢献事業に従事する傍ら、学校・大学における開発教育・キャリア教育に取り組む。2007年から隠岐島前高校魅力化プロジェクトの立ち上げに参画し、20年6月より現職
ポイントは、単なる国内留学ではないということ。「地域」と「みらい」という言葉が名称に含まれているとおり、地域みらい留学を実施したい公立高校は、地元の市町村と協働して魅力ある高校づくり(以下、高校魅力化)を一体となって行うという前提で初めて参画が可能になる。つまり、自治体は地域での留学生の受け入れ環境や教育資源を提供し、高校は地域をフィールドにした学びを提供していくことになる。
参画する高校のある地域は主に非大都市圏。自然に恵まれ独自の文化が息づく反面、人口減少、少子高齢化、経済縮小など、日本が抱える社会課題が、現実のものとしてその地域を覆っている。生徒たちは、そのリアルな社会の縮図の中で大人たちと共に地域資源を生かしながら、PBL(Project Based Learning/課題解決型学習)に取り組める。大都市圏ではなかなか難しい、自分の興味・関心に基づいた探究的な学びをまさにハンズオンで実践できるわけだ。実際の留学生は、どんな子たちなのか。

(写真:滋賀県立信楽高等学校提供)
「豊かな自然や地域の活動に興味があるとか、海洋に興味があるから海に近い高校を選ぶとか、やはり自らの興味関心、テーマを持っている子が多いですね。帰国子女や中高一貫校に通っていた生徒も結構います。留学生たちは言葉にはしませんが、進路の選び方をはじめ既存のやり方に対する違和感や、もっと違う世界を見たいという好奇心、探究心、さらに『周りによってつくられた今の自分』を超えて成長したいという気持ちが共通して根底にあるように思います」