「民主主義疲れ」が決めたフィリピン大統領選 東南アジア諸国で「民主化の逆行」が始まるのか

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5月のフィリピン大統領選で、故マルコス大統領の息子であるフェルディナンド・マルコス氏が当選した。民主主義的価値が後退し、権威主義的傾向がいっそう強まることが懸念されている。

マルコス候補の選挙集会には若者の姿が目立った(写真:筆者撮影)

5月9日に投票が行われたフィリピン大統領選挙で、フェルディナンド・マルコス氏(通称ボンボン、64歳)が地滑り的勝利を収めた。悪名高い独裁者フェルディナンド・マルコス元大統領(在職1965年~1986年)の息子だけに、海外メディアの報道では、とかく彼のうそや欺瞞、そしてSNSを中心とした偽情報ネットワークに注目が集まった。

しかし、マルコス氏の勝利は多くのフィリピン人有権者が「悪い男に騙された」ことが原因なのだろうか。現地でみた実像を報告したい。

1986年、首都マニラを貫く12車線のエドサ通りを怒れるデモ隊が埋め尽くした。そして戒厳令のもとで反対派への拷問や殺害を繰り返していた当時のフェルディナルド・マルコス大統領を退陣させることに成功したのだ。

のちに「エドサ革命」や「ピープルパワー革命」と呼ばれるようになったこの抗議活動は、世界的な民主化の波の先駆けとなり、その間接的影響は、韓国、台湾、中国などのアジア各国、そして東欧諸国にまで及んだとされる。

目の当たりにしたマニラの「変わらない」現状

今回圧勝したマルコス候補は、大胆にもこのエドサ通りに面した一等地に選挙本部を構えた。

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